アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-5-
-
「……お前はなぜ浅かった傷を深くしようとするんだ。さっきの仕返しか?」
『相手に恋人がいるっていうのにですか……?』という彼女の言葉を聞いた瞬間、梓と男がキスしている光景が蘇る。
「そんなつもりは一切ありませんが……ではもし仮に市川梓が恋人と別れ、清水さんと付き合うことになったら、どうするんですか?」
「どうする、とは?」
「彼の体質は付き合ったとしても、変わることはないんですよね?もしかしたら清水さん以外と寝る可能性もなくはないはずです。そのときはどうするんですか……?拘束するんですか?」
「そんなことはしない。考えたことはある。俺以外の人と寝る梓を見たら……とか。
でもわからなかった。実際に見たわけではないから」
「でもいずれはそうなる可能性も……」
確かに否定はできない。ずっと耐えきれなくて男を誘っている男が恋人ができたからってそう簡単に止めるとは限らないから。
「それも覚悟の上。それでもあいつが好きだ」
彼女はそっとため息をついた。
「…そうですか、わかりました。あなたの気持ちはわかりました。父には『タイプじゃないし、年も結構離れているので、お断りしておきました』と伝えておきますね」
「…何かすごい言われようだな」
「私をフるんですから、それくらい言ってもよろしいんじゃないですか?」
元恋人を一途に思う可愛げのある女だとは少し思っていたが……
「可愛くないな」
「お褒めいただきありがとうございます」
やっぱり可愛くない。でも可愛くないのは俺も一緒か……
彼女の前では強気ではいたが正直何か策があるわけでもないし、本当に梓が俺を受け入れてくれるのかもわからない。
今は不安でいっぱい。でもそれを見せたからって梓を困らせるだけ。
はぁぁぁ……もう一度言うかもしれないが、30前の男が何を考えてるんだって話だろう。
でも俺は悩む時間を設けたくなるほど、自分の中で本気なんだって思うんだ。
彼女と食事を終え、今の梓の状況だけでも伊織に確認しようと診療所に向かおうとすると、男の集団ができていた。なぜか気になって車の窓を開けると。
「梓のフェロモン……」
ごくわずかに梓のフェロモンが漂っていて。もしかしたら近くにいるのか?
「染谷、車止めろ」
車を停車させ、周辺を探す。すると男を誘う梓を発見する。
発情しきった目、苦しそうに男にすがる手。フェロモンに誘われ男どもが梓に触ろうとする。
「触るな」
俺の声を聞いた男どもは全員硬直する。
「…し……みず……さん……」
「行くぞ」
苦しそうに呼ぶ梓の声。梓の手を掴み車へ連れ込む。俺を見た梓は驚いていた。
「な、何で……何でここに……」
「知らん。伊織のところへ行こうとしたらお前を見つけただけ」
「な、なにそれ……」
見つけた……いや、探したって言った方がこの場合は正解かもしれない。
「染谷、伊織のところへ」
「かしこまりました」
俺はそのまま伊織の所へ向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
126 / 764