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11、夢か現実か -1-
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誰かのわざとらしい咳が聞こえた。そしてその後に染谷の声が聞こえる。
「何も聞いていません。大丈夫です。市川様が純祐様を好きなどと言う話は聞いていません」
さっきと同様にはっきりと聞こえる。眠くて目は開けられないけど、耳はちゃんと起きているようで。
染谷の言葉が耳から離れない。
『市川様が純佑様を好きなどと……』
梓が俺のこと好き……?さっきのように夢じゃなくて……?
梓の鼓動が耳に聞こえてくる。
ドッドッドッ……
徐々に加速する心臓。本当に……?本当に俺のこと好きなのか……?
夢じゃなくて……?今聞いている話も全部……現実……?
梓と染谷が話をする。しばらくすると染谷が出ていく音が聞こえて、部屋の中で2人きりになった。
「染谷さーん!」
梓が染谷を呼ぶ声が聞こえる。でも返事は返ってこなくて。
俺が重いのはわかってる。退いてあげたいけど、疲れていて体が動かない。
まぁ、このまま梓の腕の中で眠っていたいという気持ちも少しあるけど。
最初は頑張って声を出していた梓だったが、だんだんと助けを呼ぶことをしなくなっていった。
そして静かになる部屋。だんだんと重かった瞼が開き始めた頃、梓は眠りの中に落ちていた。
翌日。
あの後、いったん目覚めたが、梓の傍を離れたくなくてもう一度眠りについた。
そして翌日になり、朝食を取っていると何だか視線を感じた。
「…何見てるんだ、染谷」
いつもはそんなに俺の顔をジロジロ見ないのに、やけに俺を見る。気になって問い詰めてみると、昨日撮ったという写真を見た。
それは俺が梓に抱きついている写真。
「純佑様がこんな風に市川様に甘えていることは珍しいと思いまして。記念に撮らせていただきました」
「撮らんでいい」
そう思ったが、写真を撮ってもらって良かったと思った。梓の表情を見て。
困りながらも照れている表情。俺が夢の中で見た表情と似ている。
「……本当に勘違いするぞ……」
眠りながら聞いた染谷の話、梓の表情。計算して言った言葉なのか、素で出てきた言葉なのかわからない。
でも本当に勘違いする。
「…そろそろ市川様を起こしてきた方がよろしいのでは?」
時間を確認すると授業が始まるであろう時間の1時間前。今日も授業があるって聞いたような……
「…たく、世話のかかるやつだな」
そうつぶやきながら、寝室に向かった。
後ろから聞こえてくる染谷の『クスクス』と笑う声をシカトして。
部屋に入ると目の前に梓が立っていた。ちょうど梓も部屋から出ようとしていたみたいだ。
「うわぁ!?」
俺を見て驚く梓。そんなに驚くことか……?
「起きたなら、シャワーでも浴びるか?昨日そのまま寝ただろ?」
「えっ…あぁ……」
横を歩く梓。視線を感じるなと思ったら、俺を見ていて。
そしてほほ笑んだ。
「良かった……」
「ん?何が」
「ううん、何でもない」
機嫌のいい梓。いい夢でも見たのだろうか。
それとも……俺のおかげ?
……いやいや、自惚れるのは早い。あれが現実かなんてまだ確証はないから。
シャワーを浴びて朝食を取る梓。大学だというのに、ゆっくり食べている。
……てか、何で俺がこんな梓の予定まで気にしなきゃいけないのか、とは思うが。
「そんなにゆっくりしていていいのか?今日大学だって染谷から聞いたが?」
「そうだけど……何で?」
「時間、きちんと見ろ」
俺の言葉で梓は慌て始めた。気にしてなかったのか……
「何で、わかってて早く言わないのさ!!」
「自分で把握しててゆっくり食べているのかと思ったから」
キャンキャン吠える犬のように文句を言う。
自分の予定くらいちゃんと把握しろよ……
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