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子どもみたいに満面の笑顔ではしゃぐ小夜は、本当に可愛くて。腕の中に閉じこめてパクっと頭から食べちゃいたいくらいの激烈な可愛さだった。
さっきも「次はどこかなって思って。」って上目遣いで見上げてきたうえに、ちょっと唇を尖らすという反則技をかけられて、一瞬息が止まった。
ソレハ、キッスヲオ望ミデスカ?
可愛さ爆弾を浴びてしまって、見事に被弾。いま小夜を見たらキスをしてしまう危険水域に達してしまい、しばらく小夜の顔を見れないという被害にあった。
もー、なんなんですか、この子は。
無意識にやってるところが罪深い。そして、歌舞伎座に着いた時のはしゃぎようは、今日イチのテンションで相当可愛かった。
確実に俺と小夜の距離が近づいてきていることがわかる。いまも、俺の腕をしっかりと掴んで、あっちの売店、こっちの売店と忙しい。それに敬語をとった話し方も自然と出るようになった。
時計を見ると、あと10分で入場時間になる。
組紐を使ったストラップを眉を寄せながら見ていた小夜に、そろそろ時間だよ、と声をかけるとハッと顔を上げた。
「風見さん、トイレは?」
「ん、行ってこようかな。小夜は?」
「後でいくから、先に行ってきて良いよ。」
地上に上がるエスカレーターのすぐ近くにトイレがある。小夜の言葉に甘えて先に行かせてもらう。小夜も俺が戻るとすぐに行って、帰ってきた。
地上にあがって、一幕見席用の入場口に行く。ここから一気にエレベーターで4階へ移動だ。エレベーターの右側にロープが張ってあり、もう少ししたら並ばせられるようだ。
ベンチに座って、今日の演目のチラシをふたりで眺めた。
お金をだせば、解説付きのラジオ(イヤホン付き)が借りれるが、小夜は聴きたいかな?
「小夜、この機械、借りる?」
そう聞くと、小夜は首を傾げた。
「ううん、雰囲気を感じたいから、要らない。」
「だよね。実は俺も初めて歌舞伎観るんだ。」
「え?そうなの?!すごい知ってるから、てっきり来たことあるのかと思った。」
小夜の目がまん丸になった。
「風見さんにもハジメテがあったんだね。」
ふ。それは、名刺交換のハジメテ事件ってやつにかかってるのか。
「そうだよ、ふたりで初体験だね。」
意味ありげに返すと、小夜は真っ赤になった。
「も、もぉっ!・・・風見さんが言うと、なんか別の話に聞こえるよっ」
可愛い顔に更に揶揄(からか)いたくなった矢先、スタッフの声が響き渡った。
『それでは時間になりましたのでー、順番にお並び頂きますがー、番号を呼ばれた方だけがお越しください。』
スタッフの女性が声を張り上げる。
『1番から20番までの方、お越しください。』
見てみると、ロープが張ってあったところに皆が並び始めた。いつ呼ばれてもいいように、財布からチケットを取り出す。
『21番から40番までの方、お越しください。』
ベンチから立ち上がり、小夜の背中を抱くように押して、列に並ぶ。わくわくするね、と小声で見上げてきた彼の小さなの頭を撫でると、微笑んだ。
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