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「待ッテイタヨ、久(ひさ)シブリダネ。」
通された取締役室で満面の笑みで迎えてくれたのはエドワード1人だった。
握手からのハグはいつもの流れだ。
「ご無沙汰しておりました。お元気そうでなによりです。」
エドワードは冷たいお茶を持ってきた女の子を下がらせてから、ちょっと見てほしいとデスクに呼ばれた。
座るように言われ固辞したが、強制的に役員の上等な椅子に座らせられた。
「ココガネ、気ニ入ラナイ。」
背後から抱きしめられるような格好でパソコンの画面を指差される。不快に思いつつ、客の指示に従ってパソコンを操作し、変更希望箇所をメモしていった。
「ソシテネ、ココ。」
俺のマウスを握る手の上から、手を被せて矢印を動かしていく。
「コノ動キハ、君ミタイダヨネ。」
そう言って胸に手を回してきた。左手で俺の右肩を持つようにして、抱きしめてくる。
・・・これがあるから、嫌なんだ!
「ホラ、動キガ硬クナッタ。」
息を吹きかけるように囁かれた。唇が耳朶に触れたが、無反応に尽きる。
「ワタシノモノニ、ナレ。」
「ご要望にはお応えできません。」
「君ハ難シイネ。三笠(うち)デノ席(ポスト)モ用意スルヨ。」
「今の会社が気に入っております。」
「ツレナイネ。最高ノfield(フィールド)ヲ用意スルノニ。」
覗きこまれ、唇に近づいてくるの顔を左手で止めた。
「恋人が泣きますので、離してください。」
「恋人ハ啼カセルモノダヨ。君モ最高ニ啼カセテアゲルカラ、ワタシノ、モノニナレ。」
「無理なご注文です。」
「ツマラナイネ。」
手をどけられて、代わりに耳を食まれた。胸に回っていた手を力で解かせると、立ち上がった。
「それでは、失礼いたします。」
深々とお辞儀をしたあと、振り返りもせずに部屋を出た。背中に「マタ呼ブ。」と笑いながら声を掛けられた。
・・・不快だ。
三笠を出て、飲食店が入った雑居ビルに向かう。トイレに行き、耳を洗った。
少しずつ接触が多くなってきている。
だが、上司に相談するにはデリケートな話だ。営業として気に入られているならまだしも、性的な対象で見られて、ヘッドハンティングもされている。
億単位でうちに金を落とす会社だ。会社は俺が気に入られているうちは、担当を変えることなんてないだろう。
小夜に癒やされた心は、エドワードのせいで暗く落ち込んでいる。鍵につけたストラップを握りしめて、息をついた。
小夜に逢いたい。
鏡に映る暗い顔をした自分が見えて、不快で目を逸らした。
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