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俺たちのバランス〜修二〜
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気がついたら、マンション前の坂を下った所にある公園のベンチにいた。
胸に手を置くと、バクバクと心臓がうるさくて今だに動揺してるのが分かる。
結局どうすればいいのか分からなくて部屋を出てきてしまった。
現状を直視していられなかったし、4人のうちの誰かが起きて顔を合わせるのも怖かった。
だけど…意外な事に…僕は冷静だ。
自分でも不思議だけど、むつの浮気を疑うより、たまたまじゃないかっていう思いの方が強い。むつはお酒を飲むとキス魔になるし…。その程度だと思った。
ただ、現状が衝撃的すぎて直視できない。
僕が目にしたのは、コンビニの袋と散乱したゴミ、そして抱き合って眠る男女がそれぞれタオルケットをかけて眠っていたこと…、仰向けで大の字のむつの素足と横向きの美樹ちゃんの素足が寄り添ってくっついてたこと…。
むつは家に帰ると短パンの部屋着に着替えるし、彼女はスカートだろうから、タオルケットから覗くのが素足でも納得がいく…。きっと何かの間違いだ…思ったけど…あの場で上半身がどうなってるのか確かめる勇気はなかった…。
修二「…昔は、よく夢に見たな…」
2人が、やっぱり女の子が良いって言って別れる夢。
だから、驚きが少なかったのかもしれない。
…もっと取り乱すかと思ったけど……意外に頭は冷静だ…
それに、むつの性格上、一昨日まで肌を合わせてたのに、急に別に行くとか、僕と華南の目を盗んで浮気してたとは考えづらい…。浮気の可能性があったとしても、むつらしくない…。
手に伝わる振動は相変わらずバクバクと早い…。
大丈夫、僕は取り乱してない…
むつは隠れて浮気なんかしない…
僕は心の中で繰り返して、胸を強く握りしめた。
大丈夫…
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気持ちが落ち着いてから、マンションに戻ったら、みんな出払った後だった。
和室はかたずけられ、むつはとっくに出社してる時間だった。僕は授業に必要な道具を取って、遅れて大学へ向かった。
授業中、気を抜くと今朝の光景が脳裏をよぎる。
大丈夫…
きっと大丈夫…
何度も言い聞かせてなんとかノートをとった。
ーブブブブッ♪
昼休み。携帯が振動して手に取った。
あっ、むつから…なんだろう…
嫌な汗が背筋を伝う気がして緊張した。
………。
〝今日は外で食ってくるから、晩飯いらない。先寝てて〟
無意識に指先が震えた。
今朝の光景が脳裏をよぎる…。だけどこういうメールは初めてじゃない。華南なんかしょっちゅうだし、むつも時々ある。
僕は震える指で〝お疲れ様。いつものメンバーで勉強会?〟と、入れてみる。むつはすぐに返事をくれた。
〝そうだよ〟
また…今日もあのメンバーで………。
むつのことは信じてる…なのに心臓が嫌な音を立てる。バクバクと心拍数を上げ居心地が悪くなる…。
まるで…心と体が違う動きをしてるみたい…。
大学が終わったら、いつも通りスーパーに寄って買い物して、いつも通り誰もいないマンションへ帰る。
ご飯の支度をして、華南の帰りを待った。
華南「ただいまー」
玄関が開くと同時にいつものように華南が帰ってきた。
華南「オっ。久々お出迎え?」
修二「おかえり」
華南「奏一さんどうだった?」
靴を脱ぎながら兄貴のことを尋ねられ、どこかで安心した。華南はアレを見てないんだ…。
修二「うん、お酒入ったら急にプツプツ言い出してさ、寂しそうだったから、ちゃんとあやしてきたよ。華南は?二日酔いになってない?」
華南「あの奏一さんも、溺愛の弟相手じゃタジタジだな。昨日も竜さん超しつこくてよ…、話し長居し、おかげで寝ちまった、大丈夫普通に食えるよ」
最近竜也さんは悩み事があるらしく、華南はそれを聞かされ続けてる。
修二「そっか、一応軽めにしたから」
華南「サンキュー」
いつも通りの華南。
僕は背中で手をにじり締めて聞いてみた。
修二「華南は会社間に合ったの?…今朝家に寄った?」
嫌な汗が出そうで、必死に普通を装った。
華南「ああ、8時ちょっと前だったかな?シャワーしてすぐ出たから、間に合ったよ」
普通に答えた華南が、「腹減ったぁー」ってリビングに入っていく。
…むつは居なかったのかな?…っていうか、少なくとも彼女達は居なかったんだよね…。
それとも…華南も見たけど言わないようにしてるとか?
…。むつには確かめるまで、華南には黙っておいた方が良いよね…。
だけどむつは、次の日も夕飯要らないってメールをしてきた。
僕がむつを信じてる気持ちと裏腹に、むつは、この日からどんどん様子がおかしくなっていった……。
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