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(番外編)純愛♎︎狂愛2
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百目鬼「ストーカー?」
その日、賢史さんが連れてきたのは、賢史さんの知り合いの知り合いの女性の依頼者。
お嬢様風の清楚そうな女性は、髪の毛をフワッとカールさせてるロングヘアー。
白いシャツにカーディガンを羽織り、ベージュの膝丈スカート。緊張気味の女性は、俯いたままだ。
百目鬼「ストーカーなら警察だろ、もしくは弁護士の方が良くないか?」
賢史「俺がここにきた時点で察してるだろ」
百目鬼「知り合いの贔屓目でも扱えないほど証拠無し?」
賢史「妄想レベルだね」
どうやら、ストーカー被害として警察に申請できないようだ。
賢史「お前に依頼するよう紹介したのは、こいつの過去の行いが関係してる」
そう言って、賢史さんはソファーにふんぞり返ったままクイっと親指を女性に向けた。
女性は恐る恐るといった感じで、鞄から1枚の写真話取り出した。
百目鬼「………」
マキ「……」
わーお、お見事な改造バイク。それに跨ってる真っ赤な特攻服を身に纏う女の子達。
賢史「こいつ平安名姫香(へんな.ひめか)、元、猩々緋(しょうじょうひ)のレディースだ」
えーっ!!
全然見えない!ってか写真出されても分からないんだけど、どれどれ?どれが姫香さん!?
姫香「…これが私です」
鈴の音のようなか細い声は緊張からか掠れてた。
スッと指差された先を見ると、そこにはショートヘアーに白マスクしてガン飛ばしながらバイクに跨る女子が。
姫香さんの指は、綺麗にネイルされて手入れも行き届いていたが、関節の部分が少し太めだった、スポーツ選手が突き指なんかでなるのに似てる。喧嘩の名残だろうか?
百目鬼「……ヘンナさん」
姫香「あの…、姫香でお願いします。名字は嫌いで…」
百目鬼「姫香さんの事情を伺いましょう」
姫香「…猩々緋のみんなの絆は宝物です、でも、今はレディースだった事実があるために…、男性とお付き合いが上手くいかなくて…。私はもうすぐ30で、子供も欲しいのに過去がバレて捨てられることばかりで…」
百目鬼「…」
姫香「でも、今お付き合いしてる方がプロポーズして下さったんです。…先月私の母が倒れて、家族になって私と母を支えたいと言ってくださいました。…私、結婚する相手には、過去をお話しするって決めてて…、プロポーズされた日に、お話ししたんです、別れも覚悟してました。そ、そしたら、『それがどうしたの?』って…」
涙ぐむ姫香さんから、綺麗な涙が流れ落ちた。
キラキラ光る宝石のようで、嬉しさが溢れ出てた。
自分の闇を打ち明ける勇気、それを受けてもらえたことで、今までの苦痛と苦労と努力が幸せに変わる瞬間。
それは、僕が今までの何十人と見てきた光景。自分の性癖から解放された人。片思いが実った人。でも、今までの見た涙の中でも、姫香さんの涙は一番の輝きを放っていた。
姫香「それで…、母の手術が決まったんですが、その前に花嫁姿が見たいと母が言うので、簡単な結婚式をしようと思っていたんです。友達にもそれを話して、ブログにも載せました。
…そしたら、ポストにレディース時代の写真が届いたんです」
百目鬼「写真は普通の?落書きされてたり切り刻まれてたりは?」
姫香「一言だけ『また一緒にい走ろうね』と」
姫香さんは鞄からその時の写真を出した。それは特徴のある女の子が書く丸文字みたいなので『また一緒に走ろうね』と確かにそう書いてあった。
姫香「私、この字に見覚えなくて、今も繋がってる友達に聞いてみました。でも知らないって。
それからも一枚づつ投函されてて。目的も分からないし、もし、昔の暴走族関係だったら嫌だから婚約者には相談しませんでした。そしたら、視線を感じるようになって、誰かにつけまわされてる気がして、怖くなって…友達の紹介で賢史さんに相談に乗ってもらいました。でも、警察では難しいと…」
賢史「脅しも脅迫もない、写真の投函だけで、尾行されてるのも姿を見たわけじゃないとなるとな…」
姫香「だけど2日前に、試着したドレスをブログにアップしたら、ポストにこんなものが…」
姫香さんが僕たちに見せた写真は、レディース時代の他の暴走族の男の人たちが一緒に写ってる写真。服に書いてあるチーム名がみんな違い、姫香さんの他に女子5人男子11人が写っていて、その端には、『今より前の方が良かったな。一緒に走ってようって言ったのに〜、オノロケ酷いなぁ』って、特徴的な丸文字で書いてあった。
姫香「結婚の邪魔をしたいんだと思います。でも、母の手術の前に式を挙げたいので日程はずらせません。弁護士さんも勧められましたが、時間がありません。裏に顔の広い百目鬼さんを紹介して頂きました」
百目鬼「なるほど。確かに、ここに写ってる男連中に知ってるのがいる」
百目鬼さんは写真をじっと眺めながら唸るように言った。
百目鬼さんは姫香さんからの依頼を受け、準備を始めていた。すると、姫香さんを駅まで送った賢史さんが戻ってきた。お礼にと言って「 一杯奢るから今晩付き合え」って、言われてたけど百目鬼さんは「忙しい、また今度」と断った。
今日は僕と夕飯食べて朝までイチャイチャできる日。
断ってくれたのは嬉しかったけど、もしかして姫香さんの件を調べるのかな?仕事になるのかな?ストーカーは怖いものね、早く調べてあげなきゃだよね。
でも、ウキウキしながらお泊まりセット持ってきたのに…、シュン。
賢史「相変わらず仕事人間だな。ところで百目鬼…」
百目鬼「なんだ?」
賢史「姫香の件、お前には犯人を突き止めてもらうとして、マキを貸してくれな…」
百目鬼「断る」
食い気味の即答。それをニヤニヤ見てる賢史さんを、百目鬼さんがギロッと睨んだ。賢史さんは動じず顔を百目鬼さんに近づける。
賢史「俺にじゃないよ、姫香ちゃんにだよ」
百目鬼「マキは事務員だ。現場には出さない」
コンマ1秒も空けずにそう答えてる百目鬼さんは、全く検討もしてない。
嬉しいけど…、僕なら全然やれるのに…
賢史「姫香ちゃんの結婚式は一ヶ月無い、式の準備もしなきゃいけないし、身辺も見て回らなきゃいけない。だが、男がウロウロしたら犯人を刺激するかもしれないだろ?だから、妹として姫香ちゃんと行動してもらって変な奴がいないか探って貰いたいだけだ。マキの観察力は俺も一目置いてる」
百目鬼「…マキは現場に出さない」
賢史「おやぁ〜、仕事なのに出し惜しみか?マキちゃんが大事な子だからかい?」
百目鬼「マキは事務員だ」
賢史「杏子だって事務員だが、現場に出るだろ、マキちゃんだけ特別扱いか?」
百目鬼「け…」
マキ「僕やりたい♪」
百目鬼さんの役に立つならなんだってしたい。
百目鬼「マキ!」
賢史「流石嬢王様」
マキ「大丈夫だよ百目鬼さん、女装して姫香さんと行動してみて、変な視線感じないか見るだけでしょ?」
百目鬼「ガキがでしゃばるな!」
百目鬼さんの凄い怒鳴り声と形相。
だけど知ってる。百目鬼さんは心配してくれてるだけ。言い方が乱暴なほど心配度合いが高いだけ。ちょっと嬉しいって言ったら、怒られちゃうんだけど…
マキ「出しゃばらないよ、姫香さんと一緒に行動するだけだよ、他には何もしない。万が一があっても、僕は空手やってたし、剣道も齧ってるし、護身術くらいは出来るよ」
百目鬼「ふざけんな!万が一があってからじゃ遅いんだよ、危ない目に自ら飛び込むバカがいるか!」
百目鬼さんのすごい剣幕に、賢史さんがニヤニヤしてる。
賢史「百目鬼、過保護だな、嬢王様と付き合ってんのか?」
百目鬼「付き合ってない!!」
……
賢史「ならいいじゃん。姫香ちゃんと歩くだけだぞ」
賢史さんが僕をチラッと見た。
賢史さんはまだ、僕たちが付き合ってるのを知らない。探りを入れてきてるんだ。
僕は動揺してバレるなんてヘマは絶対しない。
僕の反応の無さに、賢史さんが肩をすくめる。
百目鬼「杏子を貸す」
賢史「姫香ちゃんの本当の妹は21だ、杏子じゃ無理がある」
百目鬼「ッ…」
百目鬼さんは苦々しく賢史さんを睨む。百目鬼さんも分かってるんだ、その方が犯人の尻尾をつかむのに早いって。
マキ「大丈夫だよ百目鬼さん、僕男だし、絶対上手くやるよ!だって1週間女装して矢田さんを騙せたんだよ?ね?僕百目鬼さんの役に立ちたい!」
百目鬼さんのスーツの裾をチョコンと握ってうるうるした瞳で小首を傾げた上目遣い。
ね?ね?って念押ししたら、百目鬼さんは猫耳としっぽが見えたらしい、耳を真っ赤にして、折れた。
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