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なんでいんだよ。
ずっと俺を避けていたくせに。
口にする気力もなく、前を通り過ぎようとした。
今更何を言われようとどうでもいいが自分から避けるくらいならもうこれ以上関わるな
パシッと腕を掴まれ転びそうになるのをなんとか耐える。
「待って、」
そんな情けない声出すな。
もう俺に関わるなよ。
「悪いけこれからバイトだから急いでんだ。離せ」
「バイトって、そんなフラフラな状態で行くんですか?今日くらい休みましょうよ」
「お前に関係ないだろ」
そう言うと金井はバツの悪そうな顔をする。
それでも尚、腕が離されることは無い
「今更何の用か知らねえけど、いい加減離せ」
「離したら、二葉さん逃げるでしょ」
逃げる?
散々俺を避けて逃げ回っていたのはどっちだよ。
「意味わかんねえこと言ってないで離せ」
「嫌です」
なんなんだよ、本当に
頼むから、これ以上俺を振り回さないでくれ
「二葉さん、」
もううんざりだ。
誰かに振り回されるのも、考えたくないことを何度も考えるのも
ギリッと奥歯に力が入る。
離せ、嫌だとお互い譲らないの繰り返しで時間だけが流れていく
そもそもなんでこいつに俺が振り回されなきゃいけないんだよ。
「ほんと、いい加減離してくれ」
「いや、です」
フツフツと沸き上がる感情を鎮めることなんか出来なくて
何かがプツンと切れたような音が聞こえた。
「何が嫌なんだよ。なあ、散々俺を避けてたのはお前だろ?」
「そ、れは!」
「今更言い訳とか興味ないんだよ。お前は面白半分でちょっかいかけてたのかもしれないけどさ、俺からしたら迷惑なんだよ」
「っ、」
こんなこと言ったって、無駄なのに
止まらない
「なんなのお前。お前はよくても俺は違うんだよ!周りの人間が自分と同じようだとでも思ってんのか?散々振り回してたくせにいざ興味がなくなったら避けて逃げる。ふざけるのも大概にしろよ!これ以上俺を振り回すな!」
普段こんな風に誰かに感情をぶつけることがないから
怒り方なんてよくわからない
ただ、思ったことを述べただけに過ぎない
苛立ちの原因はこいつだ。
それに間違いはない
でも、いま俺が腹を立てているのはこいつじゃなくて
こいつに何かを期待していた自分自身だった。
心のどこかでこいつに声をかけられるのを悪くないと
そう思っていた自分に腹が立って仕方がない
八つ当たりでもなんでもこいつのせいにしなくては
自分を保つ何かが壊れてしまいそうだった。
自分でもよく分からない感情に困惑する。
これ以上振り回されるのは嫌だと言っておきながら
どこかでそれを望んでる自分に吐き気がする。
本当に気持ち悪い
一人がいい。
一人が楽だ。
そうでなければいけないのに
怒ることに慣れていないせいか息切れと動悸が激しい
最後なんて怒りでもなんでもなくただの懇願だった。
「っ、」
「……」
伏せられた顔からは表情を読み取れず
静かな時間だけが過ぎていく。
と、
グイッと強い力で腕を引かれた。
急なことに対処もできずされるがまま金井に抱き留められる。
ミルクティー色が頬を掠めた。
思っていたよりも柔らかいんだな
なんて、頭の片隅でどこか冷静な自分が呟いた。
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