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「え~…。でも、さっきみたいに我妻さんの仕事の愚痴とか、飲んでいる時の普段は見られない泥酔した姿とか見ると、この人って本当に悪人なのかな。見返す意味あんのかなって、目標が揺らいじゃうッスよ。まだ気持ちがしっかりしている今、目標を遂げたいッス。」
「だから、そんな目標やめとけって…。も、もぅ…っ!!」
我妻は部下の手を薙ぎ払うと、一声叫ぶ。
「…俺は、ゲイなんだよ!!」
浴室で叫んだ声はわんわんと響く。谺の中。我妻は所在なさげに俯いて佇み、部下は目をパチクリしながら相手の告白を耳にしていた。
「…え、マジで??」
唖然としている部下を押しのけ、我妻はガラス戸の向こうを目指す。…が、片腕を掴まれ、簡単に男の腕の中に逆戻りしてしまう。
「ねぇ。ちょっ…と、どっち??」
獣じみた吐息。噎せ返るような酒臭さ。身体に纏わりつく灼熱を帯びた身体。我妻はくらくらと目眩を覚え出す。身をよじって、男の腕から逃げようと抗う。しかし、現実は冷酷にも我妻が抗うほどに閉じ込めようと年下の締め付けが強くなる。我妻は観念して、口を開く。
「どっち、って…。」
「男役と女役、どっちなんだよ??」
舐るような落合の視線に、年上の男の毛穴からどっと脂汗が滲み出ていく。我妻はこの目つきを知っている。獲物を見定める、強者の眼。
「…我妻先輩??嘘ついたら、容赦しないよ??」
理性の吹っ飛んだ輩が、答えを強請るように我妻の首筋を食い千切る勢いで噛み締める。我妻は喉から、か細い声で叫ぶ。悲鳴はしかし、あっという間に掻き消えていく。二人しかいない浴室。張り詰めた空気が充満していく。
「…お、んなやく…。」
聞き取れるかどうかの声量だったのに、地獄耳らしき後輩はそっと腕に閉じ込めた相手に囁く。
「顔、上げて。」
我妻が嫌々ながら、ゆっくりと頭を上げる。顔を寄せてきた相手と唇が重なりかける。我妻が頭を大きく振って避ける頃には、彼の下半身は、年下の男の掌に蹂躙されていた。
「…あっ…やだ…っ!!」
逞しい年下の腕に縋り、強靭な筋肉に爪をたて、我妻は身悶えながら嗚咽を漏らす。
「おち…あい…。だ、だめだ、おちあい。いや…っ。」
啜り泣く年上をあやすように、落合は背後から抱きしめながら相手を責め立てる。
「おち、あい…。この、野郎…っ!!」
生理的な涙か。ぽろぽろと透明な雫を瞳から溢れさせながら、我妻は途切れ途切れに呪詛を吐く。
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