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「先輩♪浴室、空きました。次、いいですよ。」
「ああ、サンキュ。」
囁くように答えて、我妻は腰を落ち着けていたソファーから立ち上がる。
「後で、着替えを持っていきますね!!」
「え??…ああ、まあいいよ。」
とうの我妻から釣れない反応が返ってきても、年下の男のテンションは上がりっぱなしだ。
「…そんなこと言わないで下さいよ~!!俺、この間、先輩のサイズに合わせたスウェットを買ってきたんです!!」
本当はお洒落な服や下心満載のガウンを買いたくて仕方なかったが、『動きやすいスウェットはねぇのか』と盛んに愚痴っていた上司を慮り、落合は色気の欠片がない方を選択した。
「後で、脱衣所に持っていくんで!!」
「はあ…。」
我妻は浮かない様子で返すと、さっそく浴室へと通じる廊下にふらりと消えていく…。落合は笑顔で、ソファーに体を預ける。先程、我妻がいた背もたれに触れると、ちょっぴり暖かい。頬に締りがなくなる。テレビをつけてやっていたニュース番組を数秒眺めるが、結局画面を消してしまう。集中できない。…浴室が気になる。
「別に、中の盗み聞きをするわけじゃないよ??着替え!!着替えないと困るから…浴室前の脱衣所にそろ~っと置いてくるだけ。…それだけ!!」
自分に言い聞かせるように唱えて、落合は新品のスウェットを手に浴室前の脱衣所に向かう。脱衣所の扉を開け、落合は奥に位置する浴室に…年上の男に語りかける。
「我妻センパァ~イ??シャワーの湯加減とか、どうです…??」
皆まで言えなかった。浴室の扉は全開で、脱衣所から奥の室内はよぉく見えた。…そこには、シャワー横、浴槽の前でYシャツ姿のまま浴室にいる我妻がいた。我妻が浴槽の上に突き出した手には、それぞれ火のついたライターと…燃え盛る三枚の紙切れがあった。
「…あ。」
落合は、紙切れの正体を知っていた。一瞬で、見当がついた。他の誰でもない。落合が、年上の男に差し出した一万円札だったから。我妻が望んだ、”好きな人と一緒にいた証”だから。
「…ぁ…。」
二人が一緒にいた証が、逢引をした名残がメラメラと燃えていく。落合が踏み込んだ時、すでに年上の男が握っていた紙切れは半分が燃えていた。耳の垢ほどの僅かな灰が浴槽めがけて散っていく。
「せ…せんぱいっ!!」
落合が猛り吠えると同時に、年上の男はライターの火を消した。そのまま、我妻の手からすり抜けていったライターが、浴室の床を滑っていく。落合が走り出す。我妻が両手で札を持ち、爪先立ちになる。燃えていく札の残滓を天井近くまで大きく掲げる。
落合が年上の男を背後から抱いて制止をかける頃には、札は跡形もなく燃えている。
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