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★★★★★★ 君が悲しみに泣き叫んだあの夜も、どこかの誰かは愛に癒されていたんだって、 ☆☆☆☆☆☆
★高らかに鳴れ恋のファンファーレ、それはまるで試合開始のゴング、どうせまがいもののくせに
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★高らかに鳴れ恋のファンファーレ、それはまるで試合開始のゴング、どうせまがいもののくせに
別れようって言われたら、すっぱり別れるのに。会う約束はするのに、風邪引いたとか、急用が、とか。中途半端に逃げられたら、話も出来ない。優しいんだか、酷いんだか。
発売されたら二人でやるはずだったゲーム。色違いで買ったセーター。行こうねって話した熱海の温泉。来年こそはと誓った年越しそばの失敗。乗り慣れたヨシの車。当たり前に触っていい恋人という存在。
「わりーな、この前は」
どしゃ降りの中、走って会いに来てくれた彼はいつもの笑顔。深夜のファミレス。君の嫌いな喫煙席。他に客はいない。
「つか今日もか。ごめん、ほんと」
仕事がおして。待ち合わせ30分前に連絡が来て、僕はそこから3時間待った。先に店に入らなくて正解だった。どうせ彼は遅れるとわかっていた。
「…………あ、おまえ何か食う? …………てか、もういいか、食ったよな、あは」
僕が一言も話さず、煙草を吸っているので、彼は必死に糸口を探している。怒らないんだな、煙草吸うなって。けむい、害悪、歩く環境破壊。散々言われたっけ。いつのことだろう。もうわからない。ずいぶん昔に感じる。
「ヨシタケさ、」
「んっ? なんだよっ」
「別れようか」
「……………………」
別れは君から切り出すものだと思っていた。だって僕の人生、フラれてばっかりだったから。
「…………なんで?」
「浮気した」
「は、え、なに、どゆこと。浮気」
「この前おまえが仕事終わらなくて無理って言った日」
「……おう」
「他の男と寝た」
「…………嘘だろ」
「ほんとに」
「なんで?」
すごく怒ってる。テーブルに肘をついて、僕から目をそらさない。怒られることは怖いことだ。それなのに今僕は、微笑みを浮かべている。
「したかったから」
「…………………一応訊くわ。何を? 浮気? それとも、アレ?」
「セックス」
「……っ、はは、…………誰でもいいのかよてめーは!」
「その時はね」
君は仕事だったから。
僕がさびしいとき、君はそばにいなかった。
あの日だけじゃない。
その前も、その前も。
「………………………………」
呆れ。悲しみ。侮蔑。怒り。全部をないまぜにした顔だ。初めて見た。ヨシはだいたい、いつも笑っている。
「……そっかぁ」
ほらね。また笑った。
「………………そっか。わかった。…………俺の知ってる奴?」
「『マリアージュ』の工藤。覚えてる?」
「あー、あの……。…………あのかっこいい奴な」
「そう。…………かっこいい人だよ」
「…………っ」
ヨシはテーブルに突っ伏す。
「……あいつと付き合うの?」
「付き合わない」
「……あっそ」
それきり、会話はとまる。
煙草を吸い終わり、僕は伝票を持ち、席を立った。
雨は、降ったときと同じように、いきなりやんでいた。
ファミレスを出て。
ヨシは追いかけてきた。
もう話すことはないのに、「最後だから一緒に帰ろうよ」とのことらしい。僕らの家路は駅に着いたら左右に別れる。
無言の道程。足取りは重くもなく、軽くもなく。
真っ暗な夜道。街灯だけがバカみたいに眩しい。豪雨で濡れたアスファルトは鈍く光を反射している。
角を曲がって駅が見えたとき、ヨシは突然しゃがみこんで、号泣しだした。
「…………イサカさぁ!」
「なに」
僕はそれを、冷たく見下ろす。
「別、れるとか、言うなよォ~……っ! 無理だよ、そんなっ、な、酷いよぉ!」
「…………」
泣きじゃくる。まるで子供みたいだ。裏表のない奴。まっすぐで元気で、隙あらば引きこもる僕を積極的に外に連れ出してくれる奴。
「なー……、べつにいいからさー! 許すよ浮気したの! あいつと付き合わねんだろ!? じゃああさぁ、俺とっ、……………っ!」
「……おまえはいいよな、泣けて」
「……、……………?」
「いつも好き勝手動けてさ。僕はおまえみたいに笑ったり泣けたりできない」
夜道で。なにやってんだと思う。いい大人が二人。
「………………おまえが煙草吸うなって言うから我慢して、好きでもないディズニーなんか行っちゃって、おまえが仕事だなんだ忙しいっていうから『いいよ』っていっつも僕が許してさ! もううんざりなんだよ!」
「…………ごめ……」
「もうやなんだよ! 物わかりいいふりしておまえに会えないのやり過ごすの! 毎回ドタキャンでこっちがどんだけつらいと思ってんだバーーーーカ!!!!」
「ごめ」
「うるせーよ謝んな! そんであれだろ、もうわかってんだ……こうやって話してたらなんだかんだいい感じになって、結局はまたおまえの思い通りなんだろ。むかつく……」
「い…………嫌だったらそのとき言えばいいだろ! なんだよ俺の思い通りって!」
「だーかーらー、結局泣いてるおまえを僕が慰めるかおまえが僕をなだめるかでグズグズんなってどっちみち別れねーってことだよ、ふざけんな、別れるからな!」
「わ……っかれたく、ない、っやだ……」
「もう終わりだ、これで」
「っ……おまえだって、俺のことまだ好きじゃん!」
「……好きだよ」
好きだ。好きだ。大好きだ。だから、嫌なんだ。
「………~~じゃあいいじゃんかよお……っ!」
「…………いやだ。じゃあな」
僕はきびすを返し、駅にむかって歩いていく。ヨシはもう、追ってこない。
「慰めてよ」
「またぁ? もー、早く仲直りしちゃいなよーっ……」
工藤はドタキャンしない。約束の5分前には僕の家に来るし、明日が早いからと日付前に帰ることもない。
「……誰と? 戻す仲がない」
「わー、めんどくさ……。まあ、来るものは拒まないけどさっ」
それにこうやって、手を伸ばせば抱きしめてくれる。欲しいときに、そばにいる。
「いちおーアタシだって、本命いるんだからねー?」
頭を撫でてくれる。優しい。
「じゃあいろんな奴とセックスすんなよ……」
「それとこれとはベツモノー」
自分でシャツを脱ごうとする僕の手をとめて、工藤は僕の目をのぞきこんだ。
「……大丈夫? こんなことしてたら、心が磨り減っちゃうよ?」
僕はバカにしてるのをわかりやすく顔で表して、自分からキスした。そしてしなだれかかる。
「……忘れさせてよ」
もーやだー! アタシそーゆーセリフに弱いのよねー! と叫んで、工藤は僕を押し倒した。
「ねーほら。入ってるの、わかる?」
「っ、ん……あっ、あっ!」
「お返事は? っ、もっとっ、奥までっ、入れないとっ、わかんないかなっ?」
「あああっ、……っん、わか、わかるからぁっ!」
半端じゃなく、工藤に抱かれるのは気持ちいい。こいつどんだけテクあんのって感じだ。だいたいキスからして頭の中全部吹っ飛ぶ。なにもかもどうでもよくなる。
「っあー、あー、やだ、やーそれっ、やだっ!」
「えー、どれー?」
「あ、それ、あんっ、あ、やだ、やだ駄目っ…………っ! ………い、や、」
「はい駄目ー。まだイっちゃ駄目ー」
どこを触られても、どこを舐められても、なにをされても、ただひたすらに気持ちよくて、こんなセックスは今までしたことない。初めて身体を重ねたときに、探り当てられてしまった気持ちいい部分は、もう散々可愛がられて、いじめ抜かれている。
「まだ気持ちいいことしたいでしょ?」
後ろから犯されて、耳許で囁かれる。
「あ……ん、する……っ」
「やっだー、ゆーちゃん、超可愛い……っ」
ぎゅっと強く抱きしめられる。首筋を舐められる。
「こーやってー、抜き差しされんのとー、……っ奥にいれられんのはー、どっちが好きー?」
「ひぁ…っ、う、……んあっ、ああっ、奥、が、いい……っ! あっ、あああっ!」
ヨシとは。
こんな風にできなかった。
触ってほしいとこ、気持ちいいとこ、何も言えなかった。夢中になって、やらしい言葉を恥ずかしげもなく口走ってしまうことも。「気持ちいい?」「痛くない?」それすらわずらわしくて、僕はヨシの唇をふさいだ。セックスの最中にベラベラ喋る奴は嫌いなんだと、むこうは思ったらしい。必要最低限のやり取りだけで、僕らはセックスをした。たいして上手くもないキスをしながら。
好きな奴とのセックスが最高だなんて、嘘だ。だって今、こんなにも気持ちいい。
「っ、……マナーモードにしときなさいよ、ゆーちゃん」
「わりぃ、あーもーうるせーなー」
メチャクチャいい雰囲気を邪魔したのは、僕のスマホ。電話の着信。切ろうと、ベットサイドに手を伸ばす。表示に、……吉武 勇喜の文字。
「あ、ちょ!」
「もしもしー?」
固まった僕からスマホを奪って、表示を見るなり工藤はすぐ通話に出た。ふざけんな、おまえそれはマジで駄目なやつだろ。ちんこも萎える。取り返そうと暴れるも、体格差、姿勢、力の強さ、勝てるはずもない。仰向けでちんこ突っ込まれて両腕を簡単に片手でおさえつけられたまま、僕は何もできない。
「…………工藤です。ゲイバーで何度か………そうそう。…………えー? 今ねー、君に会いたくて泣いてるよ」
「泣いてねえよ! おまえマジでやめろって!」
「…………んー。だからね、今。慰めてあげてんの」
「工藤…………っ、んっ、やだっ」
嘘だろ。この状況で?
腰を動かされる。萎えてたはずのちんこは、すぐ反応する。ぐずっぐずの中を固いもので抜き差しされると、やばい、気持ちいい、いやいや、感じてる場合じゃない……のに。
「っ、ん、……ふ、………んっ」
せめて声を出さないように努める。こいつ、あとでぶん殴る。
「ゆーちゃんの家、わかる?…………あそう。早く来なよ意地張ってる場合?」
あーもーめんどくさー。工藤はそう言って、スマホを俺の顔の横に置いた。通話、切ったのか切ってないのか、わからない。見えない。キスされたから。
また身体を触られる。気持ちいいとこばっか刺激される。あ、だめだほんと、頭ぼーっとなる。こいつとべろちゅーすんの気持ちいい。奥までちんこ入れっぱなしだし。もういいかぁ。なにされても。
「……ゆーちゃん、また気持ちよくなっちゃってるでしょ」
「ん…………きもちい……」
「イきたい? また中出ししてあげよっか?」
「あっ……ほしい、して……っ」
僕がまたイかされるまで、あと10分。
セックスを終えて、工藤が僕に殴られるのは、さらに15分後。
それから5分もしないうちに、この部屋の呼鈴は高らかに鳴る。
★終
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