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氏原side‥
出場する競技まで、まだ時間があった僕は、救護室テントから康明を探した。
探した…とはいっても、すらりと高い身長に真っ黒な艶のあるストレートの髪。
目を惹く彼の容姿から、どこにいるのかなんてすぐにわかった。
康明が一瞬こちらを見る。
あ、目が合った。
他の人に見えないように、小さく手を振って頑張れって口を動かしてみる。
気付いてくれたかな?
ちょっと嬉しそうな顔してくれたと思ったら、それは瞬時に険しくなる。
そしてどういうわけかドス黒いオーラを放って声をかけた生徒を全力で怖がらせてる。
緊張してるのかな?それとも威嚇?
んー、康明ってそんなタイプだったっけ?
頭の中のクエスチョンマークは増えるばかり。
とにかく、康明の可憐なジャンプ姿をしっかり目に焼き付けておかないと。
「氏原先生!あっちの方で砲丸投げやってるよ!
先生と仲良い…っ誰だっけ、あの女の先生!」
隣のトモナリ君が興奮気味に指差すのは、高跳びが行われているフィールドとは全く反対方向だった。
流石に無視する事も出来なくて、トモナリ君の指す方向に目をやる。
「あ、ほんとだ。あれは鳴海先生だね。」
そこには中々ガタイの良い女子生徒たちに囲まれたナルが居て、全く飛んでいかない玉に文句をつけていた。
昔から運動神経皆無だったもんな、ナル。
その時、目を離していた高跳びのフィールドから
わぁっと歓声が響いた。
?!
女子生徒たちの黄色い声に、なんだか嫌な予感がする。
慌ててそちらに目を向けると、ちょうど康明がマットから退いた所だった。
………くそ、このガキ何とも最悪なタイミングで。
思わずゲンコツを食らわせたい衝動に駆られたけれど
右手に握られた拳をぐっと押しとどめて、トモナリ君に微笑みかける。
屈託の無い笑顔を向けられてしまうと、何も言う気にもなれず、ため息を付いて康明の後ろ姿を眺める。
もうすぐ僕も集合がかかる時間だから
次は見れないかな…。
康明のかっこいい所、見たかったなぁ…。
棒を落としたり落とさなかったり、何人かの生徒の姿を眺めていたら、僕の競技の収集を知らせるアナウンスが入った。
康明が怪我をしない事を祈りつつ、僕は椅子から立ち上がる。
あんまり走るのは得意じゃないし、それなりにやっておこう。
僕が出るのは1000m走。
トラック5周という地獄のような種目だ。
「氏原先生、がんばってね!応援してるね!」
トモナリ君の応援を受け、集合場所へと向かった。
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