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春休みは、毎日とは言わないまでも、そのほとんどをスタジオや公園で幸音先輩と過ごした。
そして新学期、俺は中3、先輩は高3になった。
俺はといえば、相変わらず家に帰ってすることもないからスタジオに行ったり学校が早く終わった日は先輩に連絡を取って高校まで迎えに行ったりしていた。
「ねー、今日暇?カラオケどうー?」
「あーわり、先輩と練習したい。」
そんな会話は日常茶飯事で
「えーまたぁ?高木最近ノリ悪いじゃーん。」
「前までお前が断ることとかなかっただろー。」
クラスではにぎやかな方の男女グループと一緒にいることが多く、
今までの俺はテストだなんだと学校の終わる時間が早い日は必ずと言っていいほど遅くまで遊び倒して友達の家に転がり込むなんてことばかりだった。
でもそれは家族がいない家に独りぼっちでいるのが嫌だっただけで
今の俺には音楽も、学校の課題で分からないところも一生懸命に教えてくれる先輩がいるし、スタジオという第二の家では優しい家族が待っていてくれる。
だから、寂しさを紛らわせるためのカラオケなんて別に行きたいとは思わなくなった。
「つか、そろそろ行くわ。」
俺が席を立つと、友人たちは俺以外のメンバーで集まって何かを話し出した。
多分これからどこで遊ぼうかとかそんな話題だろうけど。
ロッカーに無理やり詰め込んだサックスのケースを背負って、俺は先輩のいる高校に走った。
その高校はとうちの中学は、顧問が知り合い同士のため定期的に合同練習が開かれている。
俺たちにメリットがあっても高校生にメリットなんてないだろって思うけど、先輩や他の上手い人達にも会えるから有難く勉強させてもらっていた。
だから、校門の前まで行けば、たまに知ってる先輩も出てくる。
「あれ、高木じゃん。どうした?」
「あー、ホルン先輩こんにちは。幸音先輩待ってるんすけど。」
「あのなぁ、人の担当楽器そのまま名前に持ってくるのやめろ…」
えー、だって興味もない人の名前覚えようとか思わないもん。
俺には関わりないパートだし。
「幸音ならさっき階段で見かけた気が―――」
「やす君!」「先輩!」
ほぼ同時に気づいて一緒に声を上げる俺たちを見て、ホルン先輩はやれやれといった顔で俺たちを通り過ぎた。
「ホルン君と何話してたの?」
「別に。幸音先輩待ってるんですって話してただけー。」
てか先輩までホルン君って言っちゃってるし。
「まーいいや。俺明日からテストなんだけどさ。
曲練ついでに勉強見てよ。」
「はいはい。もー、あたしだって受験生なんだけど!」
「だって先輩頭いいじゃん。つかどーせ音大しか考えてねーんだろ?」
「……あー、うん。まぁ…」
「よしゃー、課題終わらせるぞー!」
「課題くらい休みのうちに終わらせなさい!」
走り出す先輩を追いかけて、追い抜くと今度は先輩が俺を追いかけて、
ふわりと舞い上がる地面に落ちた桜の花びらは
先輩をもっとキラキラさせた。
「…高木が懐いてるってのがあの女?」
「だっる。ただの芋ブスじゃん。」
「ねーちゃんあいつと同級だしなー。俺ちょっと手回しとくかなー。」
「「なにそれやっば。最強なんだけど~」」
くすくすと校門の陰で笑う3人。
その中の一人、男子中学生は自分の姉にメッセージを残す。
『しおん?って髪長い女さ、俺らの連れ引っ張りまわしてて迷惑なんだよ。
潰してや。』
ほどなくして姉から返信が来る。
『わろた任せて』
俺はそんな会話が繰り広げられていた事なんて知るはずもなく
休み明けのテストは先輩に教えてもらったおかげで、そこそこの順位にとどまり、同じく散々教えこまれたトゥーランドットはようやくミス無く吹ききる事が出来た。
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