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「ああ、でもそうすると、慧斗とは正反対のタイプなんだ。慧斗はセックスが終わると、放置するもんね」
「ブーっ!」
飲んでいた紅茶を思いっきり噴き出した。
「うわっ、きたなっ!」
「ゴホゴホッ。れっ恋、そういうこと、言わないでっ…げほげほっ」
僕は涙目でむせながらも、必死に訴えた。
「あっああ、悪い。ただちょっと思っただけなんだ」
レンは率直で素直な性格だからな。
確かに聞く限りではイザヤと正反対のタイプ…ってイカンイカン。
僕まで下ネタに移ってどうする?
それにあまり思い出したくないことだけど、イザヤとレンも肉体関係がある。
と言うよりレンを幹部のラバーにする為に、イザヤがそう仕込んだ。
だからレンが夜の相手に呼ばれることも、あったりする。
…僅かに生まれる嫉妬心を、必死に隠す僕って悲しい。
「そういえばさ、ちょっと気になってたことがあるんだけど」
「けほっ…なっ何?」
「遊真って慧斗のこと、名字で呼ぶよね? 何で?」
レンの真っ直ぐな視線が、僕に向かう。
…流石に疑問に思っていたか。
僕は一般人を演じる時、彼のことは名前ではなく、名字でいつも呼んでいた。
「ん~、特に理由はないけど…。強いて言うなら、ケイトよりもイザヤの響きがあの人には似合っているから」
「そう? でもまあ本名とは限らないし、あの人はどう呼ばれようが気にしないだろうね」
レンは一人で納得して、イチゴミルクをすすった。
僕は本音を誤魔化せたことに、心の中で安堵する。
イザヤ―その言葉の意味は『誘う』。
十五年前のあの日、僕は彼に『誘われて』組織に入った。
その名をはじめて聞いた時、彼にピッタリだと思った。
だから今でも彼のことは、名字で呼ぶのだ。
あの衝撃的な出会いを、いつでも思い出せるように―と。
これは誰にも言っていない、僕一人だけの秘密。
心に秘めているからこそ、その名は力を持つ。
秘密の重さと甘さを心の中で感じながら、レンに向かって笑みを見せる。
「まあ呼び方なんて、彼にとってはどうでもいいだろうね。僕らも本名で呼ばれるよりは、役名で呼ばれた方がシックリくるし」
「うん、それは言えてるかも」
お互い幹部になって数年は経過する。
仲間達の間では役名で呼び合うので、自分の名前を時々忘れそうになる。
「あ~あ。早く仕事終わらせて、ここから去りたいなぁ」
レンは余程学校生活がイヤなのか、ずっと同じことを毎日繰り返し言っている。
「じゃあ今晩は頑張らなきゃ」
「…分かったよ」
自分で自分の言っていることが、最低だなとは思っている。
正直レンに対しては、複雑な部分があった。
素直で可愛いレンに懐かれているのは嬉しい。
けれどそこにイザヤの存在があれば、少なからず憎しみと嫉妬を感じてしまう。
だから鷹近とのことを、わざとらしく勧めてしまう自分に嫌気が差したりする。
「セックスは嫌いじゃないしね。とっとと終わらせて、早く戻ろう」
寝ころびながら、僕の膝に頭を乗せてくる。
レンへの気持ちが、親愛だけならどんなに楽だろう?
そんな気持ちを押し隠したまま、僕は微笑んで見せた。
「そうだね。早く仕事を終わらせよう」
「…と言ったものの、なかなか進展はありません」
『ありません、じゃないだろう? ったく。お前がついていながら、ラバーは何しているんだ?』
帰宅後、僕はテンパランスに携帯電話で連絡を取っていた。
イザヤはどこかに出掛けているらしく、僕とレンが帰って来ても不在だった。
でもそれもよくあることなので、あまり気にしない。
テンパランスは僕がイザヤに引き取られた場面にいたことに、少なからず責任を感じているらしい。
たまにイザヤの不在の時を狙って、こうして電話をかけてくる。
「ラバーは高校生になるのははじめてですからね。戸惑いがあるので、なかなか上手く動けないみたいです」
『はあ…。もうすぐ潜入期間は終わるんだぞ? 分かっているのか?』
「分かっていますよ。延長は無し、中断も無しなこともね」
そしてこんな半端なままで終わったりすれば、僕やレンはただでは済まされない。
幹部でも例外なく罰は与えられる。
「今夜ラバーが頑張るそうです。明日には僕が動きますから、夜には良い報告をしますよ」
『…信じていいんだな? 仲間内ではそろそろヤバイ空気が流れている』
「はいはい、デスも少し苛立っているみたいですしね。頑張りますよ」
『まっ、お前が言うのなら信じよう。ところでどうだ? 最近、デスとの関係は』
…この人もズバッと聞くなぁ。
「変わりありませんよ。一緒に仕事をして、時々は夜の相手をするぐらいです。変化はまるでありません」
『そう、か。何かあれば、まずわたしを頼って来るんだ。分かったな?』
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