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「彼女が欲しいっ」
隣にいる二人はその声に何の反応を示すでもなく、手元に夢中になっていた。
無視?無視なの?
「ねぇ、聞いてんの!?」
「聞いた上で無視してるんだけど」
「右に同じく」
はっきりと言われ少し悲しくなる。
そんな突き放すようなこと言わなくても…
おにぎりを頬張る亜太(あた)とオレンジジュースを吸う芽鶴(めづる)。
特に芽鶴の視線が鋭くて怖い。
確かに今はお昼ご飯の時間だけどっ。
そうなんだけど!
俺はしょんぼりしながら手に持っていた箸でおかずをつまんだ。
今日の豚肉は甘辛くておいしい。
「というか今さらなの?前まで全然興味無さそうだったのに」
おにぎりを食べ終えそう言う亜太に、俺はうーんと考える。
「今さらというか…前から欲しかったけど今はその十倍は欲しいというか」
「お前また夢ちゃんの漫画読んだろ」
「あ、バレた?」
夢ちゃん、とは俺の妹のこと。
中学二年生で恋バナが盛り上がるお年頃だ。
芽鶴の言う通り俺は夢の漫画を読んだ。
帯に『きゅんきゅんが止まらない!!』て書いてあったし、そりゃあ気にもなるよ。
それに実際きゅんきゅんが止まらなかったしね。
内容を思い出しながらぽけーっとしていると、横から頭をはたかれた。
「なにっ、痛いんだけど!?」
「妄想ぼけしてる百馬(ひうま)に目を覚ます一撃」
「俺は現実見てますっ」
二人ともさっきからひどい。
俺は単純に彼女が欲しいだけなのに。
だって彼女ができたら、手を繋いだりちゅーしたり、少女漫画みたいな色んなきゅんきゅんすることできるよなぁ。
そんなの憧れちゃうよ。
「だから戻ってこいっ。お前に彼女は百年早い」
「ぐえっ、首締まってるから!」
亜太が襟元を引っ張るものだから、首が絞まって窒息死するかと思った。
親友なんだから少しぐらい優しくしてよね。
むーっと不貞腐れるように頬を膨らませた。
「も〜二人は彼女いるから余裕かましてるかもしれないけど、俺はいたこともないんだから、少しくらい相談に乗ってくれていいんじゃないの?」
「百馬には向いてないから、やめておいた方がいいと思うぞ」
「芽鶴の言う通り、そういうのはいなみんとかじゃないと無理だって」
「…急に現実突きつけてくるのなんなの」
二人の言葉が心にぐさりと刺さった気がして、胸が痛い。
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