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*182.
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こーちゃんは俺に両替した1000円を渡して例のUFOキャッチャー前へ立たせると、自分はどこかへ行ってしまった。
自由にも程があると思う。このたったの5回のチャンスで俺に2つとも取らせようとするなんて。もし失敗したら残りは自腹になるんだもんな。勘弁して欲しいわマジで。
どうせこの後自分はピンクの方だけ受け取って、青は俺に押し付ける。お揃いで付けてカフェに行こうとか言い出すんだろうなあ。
「どう?伊織いけたー?」
「当たり前。200円残ったし。」
まぁ勿論取れちゃうわけで。
一時期ハマったデカ箱フィギュアよりは全然簡単だったし。あんまり俺を舐めるなよって話だ。
「さすが!じゃあキキあげるわ、鞄付けて行こうぜ!」
「やっぱり?」
「ん?」
「いや何でもない。つかコレ持って撮ろうよ、キキララが爆盛れすんぞ。」
「これ以上可愛くなったらオレ本気で恋しちゃうよ?!」
こーちゃんの考える事はお見通しだ。ただ予想以上にキキララ愛しちゃってるのは……気にしないでおこう。
楽しんでくれるのは嬉しいし、俺も楽しいっちゃ楽しいし。何より竹内さんの事を考える暇もなく振り回される事は救いでもあった。
本人はそんな事微塵も考えてはいないんだろうけど、それはまぁいいや。
宇宙人みたく目の大きさも輪郭もまるで変わった男2人のツーショットをロック画面に設定。揃って付けたチャームはカフェの店員さんにも褒められてしまった。「お二人とも本当に大好きなんですね〜」って。いや、好きなのコイツだけ。俺99%付き添いだから。
「っか〜〜最高だった!」
「そりゃ良かったわ。俺も久々こっち来て懐かしかったし楽しかった。」
帰りは少し遠回りになるけれど、こーちゃんの家の近くまでは俺も一緒に電車に揺られる事にした。
あんなに高くまで登っていた太陽が、ゆっくりと傾いて窓の向こうを橙色に染めていく。
帰ったら、また竹内さんを待ち続ける毎日になるのか。得意の押しの強さだって、今はもう…。だって竹内さんにはノリヅキっていう好きな人が居るんだから。
「…なぁ、お前の事守りきれなくてごめんな。」
「え?あーまたその話?もう聞き飽きたー。」
「でもさ、言っとかないとオレ…。」
こーちゃんは、未だにずっと俺に謝り続けている。何度も何度も、気にしてないって言ったって大丈夫だって言ったって、別れる前は絶対こうして悲しそうな顔をするんだ。
俺が転校を余儀なくされた理由。
それは、こーちゃんの歳の離れた弟が深く関わっていた。
『──やだ、やだ助けてっ!』
『おいクソガキ静かにしろや、テメェの兄貴に俺らのダチがボコられたんだよ。』
『はなっして、やだぁ!!こーたろ兄ちゃん、いおり兄ちゃん…!』
こーちゃんは部活があって、俺は1人で帰っていた。そんな時、駅のトイレから微かに聞こえた子供の悲鳴。
それが誰とか、名前呼ばれたとか、そういうのも正直あんまり聞こえてなくて、ただただ嫌な予感を感じた俺はスクールバッグを投げ捨てて走った。
大昔の記憶がフラッシュバックしたんだ。幼い声色を囲うのは、低くてドスの効いた声。しかも何人も。
それがどんなに怖い事か、自分が一番わかってる。助けてあげなきゃって、その一心で俺は──。
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