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8月、暑さはいよいよ本格的で、猛暑日の連続観測記録を更新しているというニュースに溢れていた。
塾の勉強は、分かるようになる楽しさを教えてくれた。
自分1人ではこんなにも早く理解には至らなかったと思うし、やっぱり来て良かったと思う。
あの子さえ、いなければ。
自習のタイミングでは、隙があれば話しかけようとしてくる彼女を避ける。今更、何を話したいんだろう。話したところで僕のこの態度は変わらない。
「唯斗、勉強行き詰まってる?」
「ううん、勉強は順調。塾が休みの日はこうして直樹と遊べるくらいには」
「ならなんでそんな暗い顔?」
「僕、暗い?」
「他の人は気付かないだろうけど。多分おじさんたちも気付いてると思うよ」
「………塾に、あの子が居たんだ」
「え、まじで?」
無言で頷く。直樹は幼馴染で、中学だってもちろん一緒だ。僕が名前も出さずに嫌がる子なんて、たぶんあの子しか思い浮かばないと思う。
塾で勉強をしていることは、どんどん僕の中に積み重なっていると思う。
そして、同じように彼女に対する嫌悪感のような、嫌な感情も降り積もっていた。
「唯斗、今日は好きなだけ付き合ってやるから思いっきり遊んで忘れよ」
「そうする。ありがとう、直樹。もちろん、今もだけど。中学の時、直樹がいてくれて本当に良かった」
重たい話はすぐに切り上げる。塾が忙しくて遊べる日なんてそうないんだから、今は思いっきり楽しみたかった。
それから2人でゲーセンでゲームをしたり、ボーリングしたり、日が暮れても遊んでいた。
夏休みの大半は塾で過ごした。たまにの休みの時は、直樹と遊んでいたり、母さんの荷物持ちに付き合わされたりと、これまでとは少し違うけど、だけどとても充実した夏休みを過ごした。
海くんとの約束は夏休みの終盤だったはずなのに、あっという間だった。
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