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10月の海
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自分の気持ちを受け入れようと決めた。
真っ直ぐに伝えてくる唯斗に、自分の気持ちを誤魔化して、蓋をしたまま向き合うなんて出来なかった。
唯斗の好きは、そんな風に向き合っていいような好きじゃなかった。
いつからなんてよく分からない。
最初はなんだこいつって本気で思ってた。
でも、気づいたら嘘だとも冗談だとも思わず受け入れていた。
初めて、誰かの全部が欲しいと思った。
穏やかで、静かで、優しい。
そんな人から好きを貰うのは俺だけでいい。
真っ直ぐ追いかけるのも、俺だけでいい。
そう思うようになってから唯斗を見ると、唯斗は俺との間には絶対に超えないラインを持ってる。
唯斗は、俺には触れない。たとえそれが手でも肩でも、触れようとはしない。ほかのクラスメートにしていたとしても、俺にだけは絶対にしない。
唯斗が守る、友達のラインなんだなと思う。
本当はそれ以上になりたい唯斗が守ってる、友達を超えないライン。
そして、好きだよと言っても、俺の返事は聞かない。
海くんは?なんて聞かれたことなんてない。知ってる、と言うと一段と優しい笑顔になって終わるだけだった。
俺から言ってやれば早いんだろうけど、どうしても言わせたい。
少し曲がった、独占欲。その言葉を言われるのは俺だけだ。
修学旅行で、唯斗には恋占いの石をさせよう。
今より先のことを望んで欲しいって思ったのに、あいつの願い事はもう叶ってることだったり聞けば教えてやることだった。
そこで満足すんなよ。
俺はもっと欲しいのに。
自分はこんなだったっけ、と不思議に思う。
大切にしたいはずなのに、全部が欲しい。
キスをして、その先なんてもっとずっと後にあると思ってたのに、唯斗には触れたくて仕方がない。
好きだと言われてるのは俺なのに、
目の前に餌を吊り下げられてるのは俺だった。
いつでも食いつけるのに、いつだって手に入るのに、向こうから来るのをじっと待つ。
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