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城聖学園へと
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目の前のドアからガヤガヤと騒がしい音が聞こえる。
きっとこの先は賑やかなのだろう。
「おーい、入ってきていいぞー」
と、その掛け声で先程まで騒がしかったのが嘘のようにシーンと静まり返る。
俺はゆっくりと息を吐くと決意を固めるように目を閉じた。
あの日、車に乗った後すぐに叔父が理事長を務める城聖学園へと向かった。
城聖学園は山をこえたところにあって今まで通っていた学校とは比べ物にならないくらいに豪勢だ。
正直、俺としてはこんな事に金を使うのはあまりいい気はしない。
叔父はお金持ちだが俺の家庭は、はっきり言って庶民だから。
父親は会社の社長で母はその秘書をやっていて普通ならば金持ち暮らしをしているのだろうが生憎俺の両親は変わっているようで
稼いだ金は全て預けて一般の家庭と変わらない家に住んで過ごしている。
両親曰く"こっちの家の方が温かみがあって素敵"なんだそうだ。
確かに無駄に広い家で暮らすよりは数倍居心地はいいだろう。
まぁ、金持ち暮らしに憧れないことはないが。
そんなこんなで城聖学園の校門を見て顔を歪めていたわけだけど。
叔父からの呼び出しを受けたので大人しく理事長室に向かった。
もちろん校内はクッソ広いわけだから理事長室まで運転手をしてくれた方がご丁寧に部屋まで案内してくれたっけな。
部屋に入ると叔父は相変わらず外見だけは若かった、外見だけは。
年齢は知らない。聞かないでくれ。
最初は叔父に、なぜ急に転校することにしたのかやら前に比べて笑わなくなったやら色々言われたけど無言の圧力で黙らせた。
ちなみに俺が城聖に来たのは高校に上がる数ヶ月前程度だったので叔父と話し合った結果入学は高校上がってからと言うことになったのだが
結局みんなが高校に上るのと同時に俺も高校生とはいかなくて登校するのが6月中旬からになってしまった。
なんとも微妙な時期だ。
まぁ、でも長く時間が空いたおかげで康介への気持ちも少しは落ち着いたし。
それに何よりキモいと言われた顔が隠せるほど前髪がのびた。
もともと長かった前髪は数ヶ月の間に目が隠れるほどまでは長くなっていてこれだと表情がわからないだろうというほどだ。
顔が見えなかったら目立たないだろうし、顔が見えないような不気味な奴に話しかける奴も居ないだろうから静かに学園も過ごせる。
それに……
これだったら人に迷惑かけないだろうし……。
「おーい?古谷ぁぁぁぁぁ?」
「あ、はい。 今入ります」
担任の声で今まで思い浸っていたところを現実に戻される。
やばいやばい。
考えすぎて今の状況忘れてた。
とりあえずだ、俺の目標は誰にもかかわらず静かに学園生活を終えること。
もちろん、泣かずに笑わずに。
俺は閉じていた眼を何回か瞬かせたあと深く息を吸い込むとゆっくりと吐いた。
そしてゆっくりとドアを開けて教室に入る。
今日から俺は、強い古谷 優になるんだ。
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