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もう離れられなくて#55
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家の前に着くと、珍しく電気がついていた。
僕が消し忘れたんじゃない。
僕は昼から電気なんかつけない。
…お母さん!
特別仲が良いわけではないけど、悪いわけでもない。
いつも居ない親が家にいてくれるのは、
やっぱり理由もなく気持ちが高ぶったりするもので。
「…ただいま!」
奏楽さんと電話を繋げていなくても、
自然と口から出る合言葉。
「おー、おかえり~。」
わざわざ玄関まで迎えに来てくれることはないけど、
聞きなれた声は僕の元まで届く。
今日はいい日だ。
奏楽さんの調子は少し心配ではあるものの、会う事が出来て
帰ったらお母さんまで居る。
「出掛けるなんて珍しいじゃ~ん美晴。」
「ん、まあねっ。」
放任主義の親は、別に僕がどこで何をしていたかなんて聞かない。
そうやって育てられてきたから、
言いたいことだけ言って、言えないことは黙っている。
だけど仕事で忙しいお母さんに無駄な心配や迷惑をかけない様、
門限を自分で作ってみたり、遠くへ行く用事があれば
居場所とかは一応連絡したりしている。
そ…奏楽さんと行くところは別に、遠いわけじゃないから言わない。
場所なんて恥ずかしくて言えたもんじゃないし、
そこで何をされたかなんて、口が裂けても言えません。
でも今日は、一つだけ言いたい事があるのです。
僕ね、人の役に立つ事が出来ました!
「お母さん、今日もう家に居るの?」
「んー?そうだなぁ…もう少ししたら打ちに行こうかと思ってるけど~。」
うん。お母さんはやっぱり変わらない。
僕ならせっかく早く帰ってこれたなら
その分たくさん眠る選択をとるけれど、
お母さんは早く帰ってこれたらその時間を無駄にしないように、
遊ぶ時間をちゃんと作る。
今から行くって…閉店時間までは1時間を切っているというのに
アクティブな人だ。
離婚したのは本当に小さい頃だったから、
お父さんがどんな人だったのか覚えてもいないけど、
たぶん僕のこの性格はお父さん似なんだろうな、とか思った。
「あれ~~?美晴くん。」
「…ん?」
お母さんはニヤニヤしながら、
自分の胸元のあたりをトントンと人差し指で触れている。
…?
化粧途中のお母さんの、手元の鏡を借りて僕のそこを映し出す。
「…?!?!?!」
そこには赤黒い楕円の傷。
あ、あれ、うそ。こんな所まで…?
もう、全身が痛むせいでいちいち場所なんて覚えてなかった。
忘れてたわけじゃなかったけど、
今日着てる服はもう何年も前に買ったもので、
それなりに伸びて思いの外胸元が開いていて。
… ま る み え 。
奏楽さんの噛み跡が。
みるみる顔に熱を持つ僕に、お母さんはケラケラ笑っている。
自分の息子に対してこんなイジり方する母親ってない。
恥ずかしすぎて言葉も見つからない。
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