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告白の真意
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「勝手に珈琲買ってきちゃったけど····
嫌いだったらごめん。」
「いいえ·····ありがとうございます。」
葵が甘めのものがいいのか苦いのがいいのか分からず自分は微糖が好きなので同じものにした。
後から無難にお茶にしておけば良かったかな·····なんて思いながらも葵の隣に座って缶のプルタブを開けて、口をつける。
葵はと言うと缶を両手で包み込むように持っては深刻そうな表情をしていた。
あくまで引き止めてしまったのは自分の方·····葵が自分に対してどう思っているか不安は拭えなかった。
まだ辺りが明るいからか近所の小学生達が元気に遊んでいる声がよく聴こえてくる中、自ら話を切り出すべきか頭で最初に何を発するべきか言葉を探す。
「先程は逃げるようなことをしてしまってすみません·····。亨くんに嫌われるんじゃないかと思って怖かったんです·····。」
最初に切り出したのは葵の方からだった。
丁寧にこちらに体を斜めに向けると深々と頭を下げる。
「別に、いいよ。」
亨は避けるような行動をとられたのが葵に嫌われたわけではないと分かり、一安心した。
「亨くんはもう知ってるかも知れませんがクラスの幼馴染みから良くは思われてないんです。」
暫くの沈黙の後、葵は缶の一点を見つめながら
重たい口を開いた。
直接的ではなく言葉を濁してはいるが本人自身もいじめを受けている自覚はあるのだろう。
葵の言葉を聞いて真っ先に金髪ピアスの奴の顔が浮かんだ。
「あぁ、江藤とかいう·····。」
「はい。明確な理由は分かりませんが小学生のときからです·····。言い訳に聞こえるかもしれませんが昼のメッセージも僕自身の意思で打ったものじゃないんです·····僕、友達がいないので、母親以外からの人に連絡しようとしてるの珍しいから、からかわれて送ってしまったもので·····。」
あのメッセージが葵の意思ではないと分かり、少しだけガッカリしていた。
少しでも期待をしてしまった自分に恥ずかしくなる。
すると缶だけを見つめて俯いていた葵が勢いよく顔をあげて自分の目を見てくると、その瞳にドキッとした。
妙な緊張感が葵から伝わり、自分をつられて一気に緊張してくる。
「でも、嘘ではないんです。亨くんが好きなこと·····。出会ったときから恋愛対象とし亨くんが好きになりました。嘘はつきたくなかったので·····。」
葵の耳から首筋に、かけて真っ赤に染まっていた。葵からの本気の告白。嘘をついているなど思わない真っ直ぐな瞳。
1度、治まっていた胸の高鳴りがジェットコースターのように再び上がり出した。
直接葵から好きだと言われるのが嬉しい。
ただ、この高鳴りだけで返事をしていいものではないと分かっている。
西田に冷めているとはいえ、仮にもまだ恋人同士。
亨は葵の告白に対しての返事を躊躇っていると
困惑した自分を察してか彼は言葉を続けた。
「返事がほしい訳じゃないんです。しなくて構いません·····。ただ、亨くんが嫌でなければまたこうやって僕と会ってほしいです。」
返事は欲しい訳じゃないという消極的な葵の言葉。
葵の缶珈琲を持つ手が強く握られ、彼なりの精一杯な告白にどことなく愛しさを感じていた。
「·····いいよ。」
本来なら自分に好意を寄せているのが男であろうが女だろうが、今置かれている立場からして断わるべきだと分かっていても葵との縁をここで終わらせたくなかった。
しかし、それが興味からなのか恋愛からなのかは確信が持てない。
「でも、すぐはできないけどいずれ返事はさせて。」
葵のことを自分は葵と同等の気持ちで接してるかなんて分からないのに軽々しく返事をするのも、相手に返事をしないままいるのも自分を見つめる葵を見て失礼な気がした。
「構いません·····。僕は亨くんに会えるだけで充分なので。」
先程の緊張した顔から葵の顔が少し緩んだ気がした。
亨は今は曖昧な返事しか出来ないけど、この告白されたとき初めて感じた胸の高鳴り、葵と一緒の時間を重ねるにつれて確信へと変わればいいと思っていた。
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