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別れ話
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葵への興味が好意だと自覚すると、目の前の彼を手放したくない、できるだけ長く彼の傍にいたいと思うようなった。
お昼寝から目を覚まし、起き上がった目線の先には葵がいるだけで心が暖かくなる。
そんな彼からスマホを差し出されて中を見ると西田から着信が来ていたのを通知だけ消してスマホをしまった。
不安げに此方を見てくる葵に気づいていない訳じゃない。
自ら公言していないが生徒中で噂になっているのは知ってるし、葵の耳に届いていないはずがない。
葵を不安にさせたくないな·····。
その為にも西田は全て終わりにしよう、そう思った。
このままそれぞれの教室に戻るのが名残惜しくて葵の教室までついて行く。
彼女にだってしたことなどないのに、我ながら臭いな·····と思いながらも葵に向かって手を振った。
階段を下り、自教室のある階を通り過ぎると
1階の階層へと向かう。向かう先は決まっていた。
西田のいる保健室だ。
いつものように扉を開けると、自分の姿を目にした途端、西田が飛びつく勢いで抱きついてきた。
「とおるー会いたかったー。」
軽く肩を押して自分から離れさせると背後から鍵が締められる音が聴こえ、西田が保健室中央の椅子に一直線に向かう自分を追いかけてくるのが足音でわかった。
「連絡は返してくれてもなかなか会いに来てくれないんだもん。さっき電話したのに出てくれなかったし。授業中に来てくれたってことは·····久々に·····ね?」
椅子に腰掛けようとした時、腕を掴まれてベッドの方へ引っ張ってこようとされたが「そんな気分じゃない」と亨は頑なに動かず座った。
そう言うと西田は「そう。」と大人しくなり、自分の向かえ側の椅子に座る。
相変わらずの香水、会えば相変わらず女全開に求めてくる西田に嫌悪感を覚える。
「亨、最近、葵くんと仲良くしてるでしょ。」
テーブルに身を乗り出して一点も逸らさずに自分を見つめてくる。
「だから何?」
「私言ったよね?葵くんとだけはやめてって。
自分の質を下げることはやめて。」
「質ってなに?俺、ブランドか何かなの?
ものじゃないんだけど。」
「そうじゃなくて、亨の為よ。」
亨の為なんて嘘八百で自分のため。
「彼氏の友達にケチつけんの?」
「違う。別に仲良くするなとは言ってないわ。それなりに距離を置きながら付き合ってちょうだい。仲良くなりすぎると貴方が面倒なことになるわ。」
亨は深く溜息をついた。
「あのさー、別れようか。お前のそうゆうとこ嫌いだし、元々教師と生徒なんて付き合うべきじゃない。」
「何よ今更、なんでそうなるの!いやよ。」
眉を寄せて強ばった顔をして迫ってくる西田を鬱陶しく思いながらも、反応は予想はできていた。
「亨の友達のこと悪く言って悪かったわ。でも、
それだけは譲れないの。だから亨、分かって·····。」
西田は逃がすまいとしているのか必死に自分の手首を掴んでくる。
掴むと言っても所詮女の握力、それほど強くはなく亨が片方のてで振り払っただけで意図も簡単に解かれた。
「ごめん。お前のこと好きじゃないから。」
別れる意外の選択肢がない以上、何を言われても無駄であった。
「いやよ。いやよ。」
目の前で瞳を潤わせて顔を覆うとまるで子供が駄々をこねるかのように泣き出した。
亨はそっと席を立っと保健室の扉の前まで行き、鍵を開けて外へと出る。
これで片付いたかは分からないが、西田と決別を告げた以上、背負うものが無くなり少し肩の荷が降りたような気がした。
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