アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8.最悪な展開?
-
「あれ、聞こえてないのかな。もしもーし。」
何度も響く声に、心臓が止まる。息をするのも忘れ、力の入らなくなった手から携帯がこぼれる。
ガタンと音を立てて転がった携帯からは、未だに小さく声が聞こえる。
しかしそんな会話は俺の耳には届かず。また蘇ろうとする記憶を必死に引き留めるのに精いっぱいだった。
何故。どうして。
何が起きてるの。
立て続けに起きる、最悪な再会に、胃がジリジリと焼けるように痛み、逆流した胃液が喉を刺激する。
「…おぇっ。」
ハッと気づいたときには、既にうずくまりながら吐いた後であった。
口に広がる胃液特有の苦く酸っぱい味が、更に吐き気を急き立て、嗚咽が止まらない。
あまりの苦しさに無意識に息をつめて目をきつく閉じる。
「…いやだっ…。」
弱いところは変わらない。
囚われる自分が嫌だ。
嫌いだ、
そこから救ってもらえると、未だに信じている自分が。
それでもいまは、
いつの間にか切れていた電話にどっと固まった緊張感を解きながら、電話帳にある一番上の番号を弱弱しく押した。
どうしようもない孤独感に、これ以上一人でいれるきがしなかった。
数回鳴ったコールの後、優しく、心配を滲ませた声色が響く、
「凪流、おはよ。どうした。お前、よっぽどのことがないとしてこないだろ、電話なんて。
…凪流?」
いつまでも話さない俺に、違和感を感じたのか、焦れるようにもう一度呼ぶ。
「…て、」
「え?」
絞りだした音は耳に届くには小さすぎた。
だがそれが俺の、
「おねがい、きて。」
精一杯の内側からの叫び声だった。
覚束ない記憶の中で、自分が何をしているのかわからないまま、携帯を落とし、ぼーっと窓の外を眺めた。
朝と変わらない空は、憎いほどの綺麗な薄群青だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 12