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少年として育ったハル-1
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「あーあ、ちんこ生えないかなあ……」
「一応生物学上は女だからね……自然に生えることは……ないと思うよ」
「……ですよねー」
時たま冷たく乾いた風が通り過ぎるビルの屋上で弁当をたいらげた後、月島美琴(つきしまみこと)は隣でがっくりと肩を落とす残念な親友に呆れながらも見捨てることはせず、毎度お馴染みの言葉をかけた。
(何時になれば諦めるのかしら……冗談ではない所が痛々しいわ)
三十二才にもなって本気で男の体を手に入れたいと願っている親友こと栗林(くりばやし)ハルがこの物語の主人公である。
ハルが欲している男性体……局所的に言えば男の象徴であるアソコを意味するのだが、そこにハルが興味を示したのは今から五年前のことである。
*五年前
「ハル!弟の学園祭のチケットが余ってるんだけど、一緒に行かない?」
美琴の弟が在籍する藤沢学園は、その名を聞けば知らないものは居ないと言っても過言ではない程の有名進学校だ。
因みに男子校である。
殆どの生徒が裕福な家庭の子息であり容姿が整っているものが多く、毎年開催される学園祭は、美しいもの好きな者にとって話のネタや目の保養に一度は訪れたいと願う憧れのイベントでもあった。
「ええー、面倒くさい。ほかの子誘ってよ。大喜びでついて行くでしょ」
親族優待券など一部の者にとってはお金を積んででも手に入れたい程のお宝なのだが、脱力系女子の栗林ハルにとっては特に心を惹かれるものでは無かった。
「そんな釣れない事言わないでよ。今年はいつにも増して綺麗どころが揃ってるんだから!」
男子高校生を相手に『綺麗どころ』という表現が相応しいかどうかは置いておくとして、いつの時代であっても女性にとって美しいものを愛でたくなるのは本能のなせる技だ。
「直斗も脇役だけど即席バンドに参加するの!ハルに来て欲しいんだって!」
美琴の弟である直斗の名前にピクリと反応したハルは、仕方が無いなあと呟くと満更でもない微笑みを浮かべて話に乗ってきた。
ハルと美琴の家は家族ぐるみの付き合いをする仲で、互いの両親がかなり個性的な考え方をすることもあり、子供たちで世の中の常識を理解しつつ荒波に揉まれて生きて来た同志でもある。
「直斗が出るなら話は別だよ。必ず見に行くからよろしく伝えて」
自分が末っ子であるハルは十歳年下の直斗を自分の弟の様に可愛がり、彼が中等部から藤沢学園に入るまで何かと面倒を見てきた為、我が子同然の存在でもあった。
藤沢学園が全寮制だと知ったハルが美琴以上に寂しがるので、直斗が入学を辞めると言い出した際には二人を宥めるのに苦労したものだ。
「先週会ったばかりでしょう?……まったくもう、この面倒くさがりが動くのは直斗のことに関してだけね」
「これでもだいぶん子離れしたんだよ」
「……はぁ、いつから直斗の親になったのよ。ーーあの子のことより自分のことを考えなさいね」
「……へいへい」
再び脱力系に戻り半目で返事をするハルの姿を見た美琴は顔を引き攣らせると、彼女の過去に思いを馳せた。
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