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武器庫で恋バナ-1
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その夜騎士塔の二階部分と三階部分に雑魚寝をすることになったのだが、一度に多くの初経験をしたハルは、脳が興奮状態になりなかなか眠れないでいる。
「はぁ……相手は魔物だからな。うん、魔物だから退治しなきゃ……仕方がなかったんだ」
かなり広さのある部屋で机や椅子などの備品を隅にまとめて寄せた後、毛脚の長い織物を敷いてその上に雑魚寝をしているのだが、砦は南部で王都よりは暖かい気候だと聞いてはいたのに、夜は北の地方並に冷え込んで来た。
暖炉には薪がくべられており、パチパチと火の粉が散る音を発しながら穏やかに燃えている。
「そう言えば……負傷者の方々は今もあの石造りの床で寝ているんだろうか……」
何回も寝返りを打ちながら彼らの身を心配していると、自分だけが暖かく幾らかは柔らかい床に寝ていることが申し訳なく思え、そっと起き出して一階の救護室と化した部屋に降りていった。
「ハル、どうされたのじゃ?眠れないのかの?」
「モナ様も起きてたんですか。……まぁ、眠れないと言うか、その、患者の皆さんは硬い床に寝て痛くないんでしょうか?それに寒くは……ん?それは大丈夫みたいですね」
ハルが興奮のあまり眠れないだけではなく、負傷した者達への優しさだと知ったモナは、薄らと刻み始めた目尻のシワを濃くして微笑んだ。
「リバーダルス団長も同じことを考えられて先程顔を見せて下さったんじゃ。あの方の火魔法は抜きん出て優れておるからの、こうして一晩部屋を温める魔術を掛けて下さったんじゃ」
「そうだったんですか……団長も起きてたんですね」
「武器庫にまだいらっしゃるので、ちと、見て来られたらどうじゃな?」
えへへと照れ笑いを浮かべたハルの頭にぽんぽんと軽く手を置くと、さあ、と言って優しく背中を押した。
騎士塔を出るとやはりかなり冷え込んでいるので、肩に巻き付けていた毛布をきつく握り、体全体を覆い直すと、リバーダルスがいるであろう武器庫へと歩を進めた。
「団長……まだ寝ないんですか?……また武器の強化をしていたんですね」
「何だハル。寝られないのか。……俺は攻撃魔法は得意だが、治癒魔法は苦手な部類でな。戦いが終わると、こうして皆の武器を強化するくらいしか力になってやれんのだ」
リバーダルスがウズラの卵ほどの魔石を両手一杯に乗せて何やら詠唱し始めると、ほんの少しだけ魔石が淡く光った。
この魔石は爆竹のような効果があり、体制を立て直す際などに相手に投げ付け、爆発音に敵が怯んでいる間に、攻撃の種類を変えたりする時に用いられる。
「何を言ってるんですか。それで命が救われる者もいるんですから……団長は素晴らしいですよ」
「ははっ。お前も大活躍だったな……上手く雷魔法を使いこなしていた。ハルこそ凄いと思うぞ」
ふっと優しい目を向けられたハルだが急にラビッタの断末魔の叫びを思い出し、ギュッとまぶたを閉じた。
「ハル……今日は初めての殺生だと言っていたな。よく耐えた。我々が敗北すると奴らは他所の地へ移動して被害を大きくしていたんだ。ここで食い止めてくれたことに感謝する」
リバーダルスが何やら詠唱を唱えると、武器庫がほんのりと暖かくなり、彼が火魔法で空気を調節してくれたことを知った。
簡素な長椅子に腰を掛けていたリバーダルスが隣に座れとハルを促したので、素直に頷くと毛布を脱ぎながら彼の体に身体を寄せて座った。
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