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ふわふわする。
なんだか、すごく温かい。
心地いい。
『アリエル。』
俺の大好きな声に呼ばれた気がする。
ここは天国なんだろうか。
そんなことを思いながら、目を開ける。
「アリエル!ディラン!アリエルが目を覚ました!」
「……っ…?」
俺の視界に映ったのはエリック。
それから、隣で寝そべっているのはサンディー。
あれ?
「アリエル、大丈夫か?どこか痛いところは?今医者がくるからな。」
優しく頭を撫でられる。
しっかり、感覚がある。
俺、生きてる?
「ぁ……っ、ぅ……?」
あれ、声が、上手く出せない。
「アリエル?どうした?」
「ぁ……ぁ、ぇ……」
「声が出ないのか?」
コク、と頷く。
「大丈夫だ。お前が持っていた力を使い切って、体に不調が現れているだけだ。仕立て屋のおじいさんが、じきに治ると言っていた。」
力は、使い切った?
それなのに、俺は泡にならなかった?
「アリエル、本当によかった……」
エリックにぎゅ、と抱きしめられる。
「お前が泡になることはもうない。あの力に悩むことも無い。魔女もいなくなった。」
そう、なんだ。
「アリエル……本当にすまなかった。お前をたくさん悲しませて、傷つけた。」
首を横に振る。
エリックが、また思い出してくれた。
俺を、呼んでくれた。
それで、もういい。
「あの時、お前は魔女と俺が抱き合っていたと思ったのだろう?言い訳に聞こえるかもしれないが、魔女の魔法で、体が動かなかったんだ。」
そうだったんだ。
じゃあ、あの時のエリックも、嘘をついてたわけじゃなくて、本当に、俺を、想ってくれてた?
「俺は、アリエル、お前だけを愛している。記憶をなくしても、やはり俺はお前に惹かれた。」
嬉しい。
すごく、嬉しい。
これを伝えることが出来ないのがもどかしい。
俺も、愛してる。
エリックだけ、愛してる。
だから、すごく、幸せだ。
「ぇ、ぅ……ぁ……」
「ん?どうした?」
やはり言葉は上手く紡げなくて、エリックにぎゅっと抱きついた。
「っ、アリエル……」
「ぅ……ぅ…」
好き、大好き。
エリックが、好きなの。
お願い、伝わって。
「……アリエル、お前も、俺を、想ってくれるか?」
コクコクと必死に頷く。
「っ、アリエル…!」
強く抱きしめられる。
エリックの腕の中に、『アリエル』としていられる。
こんなに嬉しいことは無い。
「アリエル、愛してる。」
「ーーーーーっ!」
甘い声で囁かれて、心がきゅーっとする。
何も言えない代わりに、エリックに思いっきり甘えた。
「……いつ、入りましょう。」
「医者も待っているのですが……」
困ったように笑うディランとカイは、いつしかのように、また廊下で待たなければならないのだった。
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