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ヤリチンボーイの初恋3
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男は一通り説明を終えると、にやついて俺の腕を握る手に力を込める。
ぎりぎりと音がするほどの力だ。思わず痛みに眉をひそめる。
「いっ……え、えーと……」
「暴れてもいいぜ。無理やり犯すの好きだし」
「ひいっ」
間近に見える男の表情は同じ人間とは思えないほど凶暴で、まるで獣みたいだった。
……だけど、ツンと目尻が上がった青い瞳や通った鼻筋を見ていると、案外整った顔だということが分かる。
……だからって犯されるのは嫌だけど!!!
「あのっ、あの、あのマジで!勘弁してください!無理!無理!」
「無理じゃねえよ。あー、何なら金やろうか?」
「それ援助交際……うぎゃあああ!!」
べろんと男の舌が俺の首のあたりを舐め上げる。
悪寒がぞわぞわと首から全身を伝う。
やばい、やばいやばい!!このままじゃ本当にこいつにやられ…………ん?
……と、ふいに男の肩に目をやって、俺はぎょっとした。
そこには俺の人差し指くらいある大きな毛虫が乗っていたのだ。虫にそこまで嫌悪感がない俺でもさすがに引いてしまうレベルの。
「うわっ、あ、あの、肩!肩!」
「ああーん?誰がんな手に引っかかるかよ」
「じゃなくて!マジで!!」
必死に肩を指差して訴えかけると、さすがに男も怪訝そうな顔つきで自分の肩に視線をやった。
よかった、これで隙が生まれて逃げられるかも!
……しかし、驚いて暴れたり叫んだりするかと思いきや、意外にも男は肩を見つめてじっとしている。
あれ、虫とか得意なタイプだったのか?
そう思っていると……。
「……てっ……て、ててててめっ、こらっ、こ、これっ……」
「え?」
「けっ、けけけむっ、毛虫だろうが……!?」
「……え、うん、そうだと思いますけど」
何でそんな小声なんだ。
男はカタカタと小さく震えて、何か恐ろしいものでも見るような悲壮感でいっぱいの目をしている。
「とっ……と、取ってくれ……」
「はあ?それくらい自分で……」
「虫とか触ったことねえよ!毒とか変な菌とか持ってたらどうすんだボケ!」
言葉こそ横暴だが、男はほとんど半泣きに近い顔をしていた。
こいつも相当金持ちのお坊ちゃんなんだろうけど……虫にも触れないのかよ。どんだけ温室育ちだ。
若干呆れを覚えながらも、仕方なく毛虫に指を伸ばす。
「てっ、てめ、絶対俺に触れないように取れよ!いいな!?」
「あーはいはい」
めんどくさい奴だな。
ため息をついて、毛虫をつまみ上げた。一瞬チクリとするが、顔には出さないようにして草むらに放り投げた。
「はい、取れた」
あっさりとそう告げると男は拍子抜けしたような変な顔をする。それから、はああ……と深く息を吐いた。
どうやら虫が苦手なのは本当だったみたいだ。
今の今まで偉そうにしていたこいつが、毛虫ごときに半泣きになっている――そう思うと少しだけ面白くて、思わず笑ってしまう。
「……ふ。ふふ、顔やばいって」
「……ッ……」
瞬間、ぎくりと男の動きが止まった。
また何か失言をしてしまったのだろうか、と不安がよぎるが、先ほどのように男が怒りを露にすることはなかった。
むしろぱっと目を逸らしてばつの悪そうな顔をしている。
「……お、お前その……なんだ、意外と使える、じゃねえか」
と、これまた横暴な口の聞き方。
だがそろそろ慣れてきた。適当にあしらって、この場を抜け出すタイミングを窺う。
「あのー、俺もう行っていいですか?」
「は?……あ、お、おい!ちょっと待て!」
……やっぱり、そんな簡単にはいかないか。
心の中で苦々しい表情を浮かべて振り返ると……。
「う」
俺が素直に立ち止まるとは思っていなかったのか、男は言葉に詰まって何やら行き場のない手を宙でふらふらと彷徨かせている。
何なんだ、マジで。
「用ないなら行きますけど」
「はっ!?い、いやちょっ、あの……そ、そうだ、お前!俺のセフレにしてやってもいいぞ!?」
…………は?
「いや、いいです……」
「な、なっ!?俺様がセフレにしてやるって言ってんだぞ!断るとかどういう神経してんだテメェ!!」
かなり引き気味に首を横に降ると、男はかあっと顔を赤くして激昂する。
どういう神経って言われても、俺にとっては男に抱かれる方が頭がどうにかしてるとしか思えないんだけど。
とにかく一刻も早くこの場から逃れようと適当に会釈をしながら後ずさる。……しかし。
「……っ待てよ」
がし、と。
俺の腕を男が掴んだ。
さっきみたいに強引な掴み方じゃない。痛くはなかった。
だが思ったより真剣なその目つきについ、ドキリとしてしまった。
「テメエ、名前は」
「え?あ……朝宮ハル、ですけど……」
真剣な表情に気圧されてつい答えてしまった。
男は何度か俺の名前を口ずさみ、何故か、ぐっと唇を噛みしめて顔を赤くする。
「い、五十嵐綾士!」
「は、はい?」
「俺の名前だボケ!お、覚えとけよ。いいな?」
「は、はあ……」
さっきから何なんだろう、こいつ。顔赤いし。
ていうか五十嵐綾士――イガラシアヤト?どこかで見たような、聞いたような……。
「あ、こんなとこにいたー!綾ちゃんってば、何してるの?」
――と。ふいに背後から何者かの声が聞こえてきた。
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