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三月下旬
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季節は春。
まだ蕾が残っている桜の木を遠目で見る。
桜は薄いピンクであちこちに咲いていて、
春が来たことを知らせていた。
桜の木から視線を外して、手に持っている
デザートのプリンをスプーンですくって食べ、
横目で家族の様子を伺った。
台所で野菜を切ってるお母さん。コーヒーを飲みながら
テレビを見ているお父さん。カチャカチャと音を立てながら橋を進めるお兄ちゃん。
前髪を整えてるお姉ちゃん。
僕はすっかり空になった容器をゴミ箱に
捨てながら考えた。
家族とはもう少しでお別れ。
その事実が未だに信じられないでいる
自分に呆れていた。
合格発表から日が経っているとはいえ、
やっぱりどこか実感がなかった。
僕は今から高校に向かう。
その高校は寮制で入学式前の三月半ばから
下旬までにつかないといけないらしい。
僕は今日行くと決めていて、
事前に準備をしていてやっと
この日がきたというわけなんだけどーー。
蓋を閉めてゴミ箱から離れて歩き、苦笑いした。
ーー正直、高校に行くのは楽しみだけど、
山の中にある高校で僕の家から高校までものすごい距離があって、
移動だけで2日はかかるらく、だるいーーー。
ソファーに近づいた後、
ソファーにかけてある真新しい制服を
広げて置き、着ていたTシャツを脱いで
真新しい制服に身を包む。
少しぶかぶかで違和感があり、近くにある姿見で映った自分をまじまじと見つめる。
似合わない。
素直にそう思った。
最初だから仕方ないよね、なんて一人で納得して洗面所でお兄ちゃんの高いワックスを
こっそりと少量取った後、
慣れない手つきで髪の毛につける。
この日のためにお兄ちゃんのワックスをくすねていたというのにちっとも上達していない。
意地になって前髪をわしゃわしゃといじる。
恐る恐る目を開けると、意外と良くなっていて
自分でも驚きながら鏡に映った自分を見つめる。
いろんな角度で髪を見た後、満足しながら自分の部屋に移動する。
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