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確固たる保証は、どこにもない
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懐里は下唇を噛み込み、居心地が悪そうに視線を背けた。
あんな紙切れ1枚で、たった一言で、清算されてしまうオレたちの関係。
わかっていたんだ。
簡単に、解消されてきたオレたちの繋がりは、どちらかが切ろうと思えば、あっさりと終わる。
[運命の番]のような確固たる保証は、どこにもない。
「……出ていきたいなら、止めない。止める権利なんてないのわかってる」
わかっているけど、納得できない。
なんの不満があるのか。
ただオレの帰りを待ち、『おかえり』と言って欲しいだけなんだ。
傍に居て欲しいだけなんだ。
……他は何も望まないのに。
懐里は、ずっと腹の辺りのシャツを握ったままだった。
「でも、理由が知りたい。納得出来ても、出来なくても、……お前の口から…」
ちゃんと『さよなら』を言って欲しい。
思っていても、言葉に出来ない…、したくなかった。
ここに居ろ。
オレの傍に居ろ。
何処にも行くな。
独りに…、しないで。
懐里を引き留める言葉が、胸の中で暴れまわる。
口を衝きそうになる言葉たちを押し留め、物分かりのいいフリをする。
荒れ狂う感情を宥め透かし、冷静さを保つコトに必死になる。
口籠るオレに、懐里は、ぼそりと声を零した。
「おれ、居たら邪魔だから……」
懐里の言葉に、オレは、怪訝な顔をする。
「邪魔ってなんだよ?」
喧嘩腰に放つオレの声に、懐里は、泣くのを我慢するかのように、眉根を寄せた。
懐里のすべてを諦めたような瞳に、じわりと涙が浮かぶ。
その雫を流さぬように、現実から逃げるように、懐里は視線を背けた。
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