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ひまわり(花言葉小説)
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15年前──
幼なじみだった二人がまだ子供だった15歳、自分には無いものを持っている……と、お互いに『憧れの人』という意識から気づくと目で追い見つめていた。そんな甘酸っぱい青春時代は……憧れで終わったワケではなかった。 『憧れの人』から『好きな人』へ、想う気持ちも見る景色も、お互いを見つめる視線の温度も変わっていった。思春期で、色々と複雑な時期に抱いたこの気持ちはそう簡単に伝えられず、又、誰かに相談なんてことも出来なかった。
いつもの様に一緒に投稿して、お昼には一緒にお弁当を食べる。学校が終わると池のある公園へ行ってはベンチに座り、お互いにその日のことを日記に綴るように語りあった。そんな楽しい毎日がこのまま続けばいい……そう願った。今のこの関係を守ればずっと一緒に居られるんじゃないかと思うと尚更告白なんて出来なかった。お互いに胸の奥深くにこの愛という『情熱』を秘めたまま、卒業を迎えた。
「俺は陸上の名門校に行く。……ずっと一緒だったのに離ればなれになる。でも、また会えるよな?」
「推薦で合格だったんだよな、おめでとう。俺はこの地元の高校。ここで……待ってるからな!帰りを……清也佳の帰り待ってるから。」
小さなこの駅から出発した電車を追いかけながら彼に向かって叫び、見えなくなるまで手を振った。
距離にしたら頻繁に帰れるほど近くはないだろう。けれど、同じ地球に居るんだ、同じ空を見て毎日暮らしていくと思うと少し寂しさが紛れる気がした。
それから更に月日が流れ、頻繁だった連絡の回数も徐々に減っていった。帰省しても会うこともなくなった。
想う気持ちがあの日で止まったまま……青春時代の甘酸っぱい初恋を秘めたまま大人になり、拗れた初恋は実ることは無いなと悟った時、諦めという言葉が頭に浮かぶと共にそれ以上に拭いきれない想いが交差した。
30歳を迎えた日、思い出の池のある公園へ行ってよく座って語ったベンチに腰を下ろしてプカプカと煙草をふかしていると後ろから声をかけられた。
「八太郎、煙草吸うんだね」
振り返るとそこには懐かしい姿が在った。
「え、な……んで、うそ……清也佳なんでここに居るんだい?」
「久しぶりだね、すっかりおじさんだ」
「……お互いに歳をとった」
「そうだね。今日は八太郎の誕生日だろう?なんねも音沙汰なくて申し訳なく思っているんだ……その謝罪とお祝いで帰ってきたんだよ」
そう、再会したのは30歳迎えた誕生日だった。歳を重ねてあの時より大人びた姿に、胸の奥に秘めていた愛の『情熱』がじわじわと高揚してきて再熱し始めた。
その時、彼は座っている前へ来て地べたへ跪きこちらを見上げてきた。
「八太郎、誕生日おめでとう。それと……愛してる、結婚してくれ」
お祝いの言葉の後に飛び出したセリフに驚きを隠せなかった。言葉と共に差し出されたのは『108本のひまわりの花束』だった。
「な、んで…うそ、だって……ずっと連絡、も無くて……」
「それは本当に申し訳なく……後でちゃんと話すよ。返事は急がなくてもいい」
「……ずっと、ずっと清也佳が好きだった!あの時から15年もずっとずっと……こんな、嬉しいに決まってるよ。夢みたいだ」
「夢じゃないよ、八太郎」
「結婚、喜んで。俺は清也佳を慕っている、愛している。ずっとそばに居させてくれ」
お互いの初恋は15年越しにやっと実った。
このあと二人は……あの時に戻ったように沢山語り合って、夜は甘くて濃い初夜を過ごした。
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