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その後。
思うことがいろいろとあった為、
俺は生活の合間にブログを立ち上げる。
暇なときには事件のことに触れるような小説を、俺たちしか知らないような情報をフェイクも織り混ぜながら書いて公開した。
文才に自信があったわけじゃない。ただ、素直なリアルさを出していれば、ある程度はウケが良いだろうと思ったし、感覚はすぐに掴めた。
なぜ、小説か?
彼を釣り上げる為。
彼女のこと、西崎ジンのこと、誘拐事件。何が背景にあるのかが知りたかった。
小説や音楽の話題に触れていれば、かつて陽炎でさまざまな挫折を味わっている承認欲求の強い『ジン』が必ず乗っかってくると踏んだのだ。まぁ──勿論、それだけじゃない。ネット上の方が良かった。
なにかを、身内に知られながら表現すること、を思い出すから
紙に何か書くのは辛い。
両親にも、兄弟にも、自分が紙に向き合う姿を一瞬でも見せたくない。今でもそれは深く、強く染み付いた感覚で、少しも触れられたくは無い話題だ。
いくら釣り上げるためだとしても表現は真面目にしなくてはならないし、その為には感覚や感情が動かなくては意味が無い。
破り捨てられ、あるいは逐一評価や報告されることに怯えているわけにいかない。
──今でも家族はそれをやろうとすると思う。俺を、俺の神様を、管理しようとしている。
神様は人に使われるのが嫌いだ。
人間よりずっと上に居たがる。
彼らが偉そうに管理したがること自体が気に食わないからと……
まあ、それはいい。
ジンが乗ってくるのであれば、
何らかの方法で、俺を試すのだろうし、
事件を隠蔽するべくあちこちで騒ぎを起こすだろう。あちこちで起きる騒ぎを纏めるうちに、必ず誘拐の真相に辿り着くはずだ。
ちょっと動けば騒ぎのある系列会社と組織間の繋りを結びつけられるという便利なものだった。
ただ
───彼らは、誘拐事件については、
めぐみさん以外の名前を、他の容疑者、被害者の名前を、ほとんどだそうとしなかった。
それにだけは、触れられたく無いのだろうか。
めぐみさんは何処に行ったのか?
めぐみさん以外、は何処に消えたのか?
誘拐の話をしていれば、いつか、辿り着くのだろうか?
「──未来ブログ──でしたねぇ……」
りくさんの言葉にため息を吐く。
思わず、並んでいる酒に手が伸びそうになるのをぐっと我慢する。
……そう、うっかり俺の能力が干渉したために未来ブログと言われ、変な形で有名になってしまったのだ。
「あー、あれは、盲点だった……やっぱり、それか」
「えぇ──あなただと偽り、うちに駆け込んで来た彼女も……未来ブログだと言いました。占い師にして欲しいとか、なんとか、当時そういったファンタジーアニメも流行りましたから」
今も、思うんだ。
やっぱり俺、
生まれて来るところを間違えたのかなって。
いろんな人を巻き込んで、不幸にした。
ありもしない奇跡も、
馬鹿みたいな陰謀論も、
俺が居なかったら、
「怖く、ありませんでしたか?」
「あまり考えてなかったんだ」
だからこれは罰で、ずっと、生まれてずっと。いつ死んだって、良かったんだ。
──そう、お前も言ってくれれば、良かったのに。
ブログが変に目立ち始めてから。
『彼女』が失踪して、二人目の誘拐が起きる。
9月24日AM3:34
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