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「一緒に過ごすのは別にいいよ」
ため息をつくと小糸はそう言った。
「本当に?じゃあその日は俺の家に遊びに来ない?バースデーケーキ焼くよ」
小糸が目を見開いて俺を見る。
「お前の家?」
「うん。その日はちょうど職場のクリスマス会で親父もいないんだ」
そう言って俺は微笑んだ。
小糸の誕生日はクリスマス当日、12月25日だった。
父親は毎年その日、職場の倉庫内を飾り付け、クリスマス会を開く。
俺も去年までは参加していたが、最近では酔った父親が部下を怒鳴りつけたり、浴びる様に酒を飲んだりする姿を見るのが苦痛で、受験を理由に今年は行かないと父には告げてあった。
父も酒も飲めない、気の利いた会話もできない息子の参加に興味はないようで、あっさり来なくても良いと言った。
好きな人の誕生日を祝うだけではなく、クリスマスを恋人と二人きりで過ごせるなんてそんな経験、俺は初めてで興奮していた。
そんな特別な日のことだけは、小糸に多少逆らったとしても譲りたくなかった。
「分かった。お前の家に行くよ」
小糸が迷いながらもそう返事をしてくれて、俺は小さく拳を握った。
「だけど本当に高額なプレゼントとか、用意されても困るから。そういうのは俺絶対に受け取らないし」
きっぱり言われて、俺は何度も頷いた。
「分かった。小糸が負担になるようなことはしない。あっ、でも夕飯はちょっと豪華にしてもいいよね?ケーキとチキンとサラダと……。小糸って食べれない物なんかある?アレルギーとか遠慮なく言ってね。あとシャンメリーって知ってる?子供っぽいって言われるけど俺、あれ好きで」
急に吹きだす声が聞こえ隣を見ると、小糸が珍しく肩を震わせて笑っていた。
俺がまじまじとその笑顔を見つめると、気まずくなったのか、コホンと咳ばらいをする。
「嫌いな物もアレルギーもなし。でもそんなに張り切らなくていいよ。お手伝いさんも作るの大変だろ?」
小糸の言葉に俺は首を傾げた。
「あれ?俺小糸に家政婦さんの話したことあったっけ?」
ふいに小糸が表情を消した。
「鈴賀くらいの金持ちなら、普通に雇ってるかと思っただけだ」
「別にうちがすごい金持ちってわけでもないよ。けど俺小さい頃母親亡くしているから、親代わりみたいな家政婦さんなんだ。次子さんっていって、すごく料理上手だから期待していてよ」
「母親」
ぼそりと小糸が言う。
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