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し、死にたい……
次の日の朝、由良はベッドの上で昨日の瀧澤との出来事に酷く精神を病んでいた。
あの後、不覚にも安心感や疲労感やらで眠ってしまった由良は、朝起きたら身体は綺麗にされ、タンスを勝手に漁ったのか、ご丁寧にパジャマにまで着替えさせられていた。
「くそ〜……、学校行きたくないな…」
枕に顔を突っ伏し、由良はがむしゃらに頭を掻きむしった。
数分間、嫌だ嫌だとベッドでグダグダしていたが、部屋の内線が鳴り、顔を上げる。朝食の用意が出来た母からの合図だ。
リビングへ行かないと心配をかけるだろうと、由良は大きな溜息を吐いて、気持ちを立て直し、制服に着替えて部屋を出た。
「おはよう」
昨日、瀧澤が訪ねてきて、部屋には防音が施されていたが、不埒な行いをしてしまった事と、それがバレていないかが不安で、由良の心臓は早鐘の如くドキドキと鳴り響いていた。
ただ、それを顔に出さないように必死でいつも通りの朝を演じながら、朝食が並ぶダイニングテーブルの椅子へと腰掛けた。
トーストとサラダとベーコンエッグ。そして甘いホットミルク。
毎朝、由良はこの内容の朝食をとる。
「昨日は余程疲れてたのね。コンサート、そんなに緊張したの?」
コーヒーを淹れた母が由良の前の席に座り、少し心配そうに聞いてくる。
母からしたら友人が遊びに来ていて寝てしまったのだ。何かしら疑問に思うだろう。
由良は極力、声色を変えずに答えた。
「あ、うん……。緊張っていうか、前夜にテレビ見すぎて眠れなかったから…。瀧澤には失礼なことしたから、今日ちゃんと謝っておくよ」
言う事を言うと、パクパクとトーストを急いで食べると、母が嬉しそうに頷いた。
「瀧澤君ってあの瀧澤礼君よね。帰りにピアノを一曲弾いて貰ったんだけど、素晴らしかったわ〜」
才ある若きピアニストと名高い瀧澤に母は興味があったようだ。
同じピアノ専攻者として話が盛り上がったとはしゃぐ母の姿に由良はトーストでむせそうになった。
変なリアクションを取ると怪しまれかねなくて、寸で止まったのだが、内心は瀧澤への罵倒でいっぱいだ。
あの野郎……何、人の家の楽器に触れてってんだっ!
苛立ちが込み上がるなか、由良はポーカーフェイスで朝食を平らげた。
「……じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。瀧澤君に宜しくね」
余程、瀧澤が気に入ったのか、母は最後まで瀧澤の名前を出してきた。
由良は心の中で怒りの炎を燃やし、顔では美しい花のような笑顔で頷いた。
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