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商品 2
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「やだ!嫌だ!離せよ、まだ俺使えるだろ!?なぁ!」
必死な叫び声が聞こえて鉄格子から外の様子を見た。
痩せた男の子がスーツの人にどこかへ連れて行かれる。
一瞬だけ涙で濡れた男の子の瞳と目が合った。
「ねぇ助けて!まだ…っ俺まだ死にたくない!」
いくら暴れてもスーツの人はびくともしなくて、無表情に男の子を引きずって歩く姿はまるで機械みたいだった。
助けて……?俺に言った…?
そう言われても俺はこの檻から出られないのに、一体どうやって助ければいいんだろう。
それに助けるって何だろう。あの子は今から殺されるんだろうか。あの子は死ぬのが嫌なのかな?
………どうして?
今日はきっと数ヶ月に1度の"処分の日"。
使えなくなった商品を経費削減のために処分する日。
もう何年も売れていない子や商品として使えなくなった子を「ゴミ箱」と呼ばれる部屋に連れて行く。
連れて行かれた子がどうなるのかは、誰も知らない。
でもきっと、皆なんとなくわかってる。
"ゴミ箱"に連れて行かれて帰ってきた人はいないから。
檻の中から男の子の連れて行かれる様子を眺めていると、同じスーツを来た2人の男が俺の檻の前に来た。
1人の眼鏡をかけているのはサクマさん。
俺がここに来た時からずっと俺の担当をしている人。
もう1人は髭が生えていて、ボードを手にサクマさんと何か話している。
「こいつはもうゴミ箱行きだな。顔は良いが、傷もひどいし返却回数が多すぎる。もう商品にはならない」
「しかし、これだけ傷がありながら買い手が尽きませんよ。まだ需要があるとは思いますが」
「いい、廃棄だ。もう使えない」
髭の人がどこかへ行ってしまうとサクマさんは鍵で鉄格子を開けて中に入ってきた。
「という事であなたは処分らしいですよ。よかったですね、念願のゴミ箱行きです」
「ごみばこ……行き……」
「ええ、ずっと行きたかったのでしょう?何にも興味を示さないくせに、誰かがゴミ箱へ連れて行かれる時だけはいつもやたらと鉄格子にへばりついていましたから」
そうか、俺、処分されるんだ。
………………やっとだ、やっと終わる。
左手首に巻きついている商品ナンバーのバンドを、サクマさんがパチンとハサミで切る。
「少しは嬉しそうな顔をしてみてはどうですか?それともやはり怖くなりましたか?」
嬉しい?怖い?どうして……?
嬉しいってどういうもの?俺は今喜んでるの?
わからない。俺は今何を思ってるの?
「……おや失礼。そもそもあなたには感情というものが欠落していましたね」
口以外の顔のパーツを全く動かさずに喋るサクマさんこそ、感情のないロボットに見えた。
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