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名前 11
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ゴシゴシと赤くなるほど左耳を擦る姿を見てピンときた。擦り続ける腕を掴んで止めると、その耳をそっと手で覆った。
「は、は、は……っ」
「落ち着け、もう血は出てない。大丈夫だ」
こいつにとってこの左耳には他の傷よりもずっと強いトラウマがあることに何となく気づいていた。
ガチガチ歯を鳴らして震えるそいつの顔をまっすぐ俺に向けさせる。
目の焦点が合い、俺を認識すると呼吸と震えが収まっていく。
大分落ち着いたのを確認すると腕を離した。
正直、俺を認識したからといってこんなにすぐパニックが収まるとは思っていなかったから意外だった。
自分で思っていたよりかなり心を開かれていると思っていいのだろうか。
「……落ち着いたか?」
熱に浮かされてぼうっとしている目をキョロキョロさせて、こくり、と頷く。
もしかしたらこいつ自身なぜここにいるのか覚えていないのかもしれない。
「おら来い。さっさとベット行くぞ」
ベットという単語にピクっと反応したそいつに「何もしねぇよ」と言うと、少し迷った後ゆっくりと腰を浮かせた。
ほんと亀やナメクジといい勝負なんじゃねぇの、こいつの動きの遅さ。4倍速にしたいくらいだわ。
普段の遅さに加え熱で上手く体が動かせないせいで、超スローの動画を見ている気分になる。
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