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マシロ 4
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「それよりなんか変な子がいるんだけど。なにそれ、僕が恋しくて作ったお人形?お兄さん僕のこと大好きすぎない?」
「人形じゃねぇし、てめぇとは似ても似つかねぇよ」
「あはっ、確かに〜。僕そんな小汚い雑巾みたいなブスじゃないもんね」
「…………」
「やだなあ冗談だよ。そんな怒んないで」
マシロと呼ばれたその人は、まるで以前からこの家に住んでいたかのような自然な足取りでソファにくつろぎ始めた。
「マシロはこうなったら追い出しても追い出せない」と苛立ちと諦めを含んだ長いため息を床へ落とすイカリさんを見て、
もしかして俺と出会う前にも同じような事があったのかな、と考えてしまう。
俺とイカリさんが知り合ったのなんてほんの数ヶ月前なんだから、俺の知らないイカリさんの時間があるのは当たり前のことなのに、
イカリさんとマシロさんにしかない共通の思い出を目の前に出されてしまうと、
なんか、なんて言うのかな。
……………寂しい、のかも。
イカリさんはすぐそばにいるのに。へんなの。
「チッ。シロ、しばらくホテルにでも泊まるか」
「ほてる、とまる………イカリさんは?」
「あ?俺も一緒に行くんだよ。真代と2人きりは流石に勘弁」
イカリさんが居るならどこでもいい。
早速携帯で調べるイカリさんの背後から、音もなく移動したマシロさんがひょっこり顔を出す。
「全部聞こえてるんですけど〜。なに、ホテル?僕も行く〜」
イカリさんにべったりくっついて俺の横に割り込むマシロさんは、その小さな顔を手のひらで押し返されていた。
あまり感じないと思っていた恐怖も、手の届く距離まで近づいてしまうとやっぱり怖くて足がふらつく。
両手をぎゅっと結んで耐えた。
「諦めなよ〜、どうせどこに行ってもついてくんだからさ。久しぶりに会えたんだからもっと喜んでくれると思ったのになあ」
ほらお兄さん僕のこと大好きだったし、と顔を掴まれている手をとってからかうように笑うマシロさん。
繋がれた手を見てなぜか目を逸らしてしまった。
俺の手とは違う。
爪もちゃんとあって、骨も浮き出てなくて、傷もない。
ちゃんと、普通の手。
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