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別れ 10
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完全にイカリさんだと思っていたから言葉が出ない。
血の気が引いてただ震える俺にサクマさんは眼鏡をくいっとかけ直した。
「おや、私のことは忘れてしまいましたか。貴方とは長い付き合いのはずなのですが」
覚えてる。俺を商品として見る静かな目も、俺を何度も売ってきた細長い手も。
ふるふると弱く首を横に動かした。
「そうですか。それなら良かったです」
どうしてここにサクマさんがいるんだろう。
「突然で申し訳ないのですが、ついてきて頂けますか」
その言葉は質問ではなく命令のように聞こえた。いつだって俺には誰かの言うことを拒否することなんて許されていなかったから。
ついて行けばどうなるかなんてもう想像がつく。
怖くてカチカチと歯が鳴る。
いやだ。行きたくない。こわい。
イカリさんがここにいろって言ったんだ。ここで待ってろって。俺は、イカリさんを待たないと。
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