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恋 13
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「誘拐された挙句汚いおじさんに好き勝手されて、何でお母さんもひなたくんも助けに来てくれないんだろうって毎日泣いてた。
今までずっとひなたくんと一緒にいたから、ひなたくんの大きな光に皆引き寄せられて、僕はその影に隠れている事ができたんだ。でも急に1人になって、"ひなたくんの双子"じゃなくて"僕"として見られるようになってしまった。僕にはそれがどうしても耐えられなくて。
ある日ひなたくんの真似をしてみたんだ。ニコニコ笑って、ご飯をくれたら"ありがとう"って言ってみた。そうしたらおじさんの機嫌が良くなって、僕の扱い方が少しずつマシになった。
ひなたくんの真似をしていれば、皆が見ているのは"僕"ではなくて"ひなたくん"だから、ひなたくんが傍にいるみたいで、また2人になれた気がしてた。
ひなたくんの真似をするだけで、大人なんか簡単に使えるんだよ。
だから、騙して、操って、この世界で生きる術を身につけた。
お兄さんだけだよ、僕のこと興味ないって言ったの。興味ないくせにずっと傍にいてくれたのも。
あの頃さ、お兄さん僕のこと好きだったでしょ。というより、好きになりかけてたってところかな。僕そういうの敏感だもん、すぐにわかっちゃうよ。
あの時お兄さんから離れなかったら、今でも好きになってくれてた?
………ああ、違う違う、もう過ぎたことを掘り返すつもりじゃないんだ、今の忘れて。
そうだよ、昔の話なんかしたって意味ないんだった。僕も変わったし、お兄さんも変わったね。ひなたくんの影響かな?
ひなたくんだってもうあの頃とは全然違う。
お兄さんが選んだのは今のひなたくんだもんね。
正直、今のひなたくんのどこに魅力があるのか僕にはさっぱりだけど。お兄さんには、ああいう弱くて守ってあげなくちゃいけない子の方が良かったりするのかな。
僕は好きだったよ、お兄さんのこと。今でもそう。でも今の好きはちょっと違う。きっとこれは執着なんだ。手に入らなかった、欲しくて欲しくてたまらないものをずっと追い求めてる内に、やめ方がわかんなくなっちゃったの。
もう一度お兄さんと会えば何かが変わるかもって思って、必死に探した。だから再会した日も本当は、少しだけ顔を見たら出ていくつもりだったんだ。
でも、何も変わらなかった。僕は結局、ずっとお兄さんを好きでいてしまう。
……そんな顔しないで、まだ話は終わってないよ。
ひなたくんを捨てて僕を選んでなんて言わない。ひなたくんに敵わないことなんて僕が1番知ってるんだから。
レプリカが本物に勝てるわけないよ。
だから、ちゃんとフラれて、このみっともない”好き”とおさらばするんだ。
……うん、そうだよ。僕が楽になるためにお兄さんを利用するの。知らなかった?僕ってこういう奴だよ。自分の為なら何だってするし奪うハイエナみたいな奴。
ひなたくんがいたら、お兄さんきっと僕の話をちゃんと聞いてくれないと思ったから、ひなたくん追い出しちゃった。ひなたくんを連れ戻す為に僕の話に付き合うだろうって、お兄さんならきっとそうするって思ってた。
当たってたでしょ?
あーあ、本当はお兄さんに会えたら話そうって思ってたこと、もっと沢山あるんだけど……………そろそろ終わりにしなきゃね。
へへ、今更改まって言うの、ちょっと緊張するね。
好きだよ、お兄さん。4年前からずっと。
……………………………………うん……ありがとう」
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