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帰る場所 15
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「ふうん、戻っちゃうんだ」
え……。
視界の端に急に現れた白い足。
いつからそこにいたのか、棚の上からこちらを見下ろすマシロさんがゆらゆら足を揺らしていた。
「おや……これは驚いたな。珍しいお客さんだ。どこから入って来たのかわからないけど、随分腕がたつみたいだね。君、名前は?」
「マシロだよ。よろしく、おじさん」
にぱっと笑って手を振る。
ハラセさんは1度俺を見てまたマシロさんに視線を戻す。
「君たち気持ち悪いくらい似ているけれど血縁か何かかな?コレを取り戻しに来たのかい?」
「血縁?取り戻す?あは、まさか。冗談やめてよ、僕に家族はいないしそんな奴どうでもいい。僕は雨宿りしに来ただけだから」
まるで羽でも生えているみたいに軽く飛び降りて、俺には目もくれずハラセさんに近づく。
お互いの体が触れそうな距離で、上目遣いに見上げてふわりと笑う顔は、この場にいる人の視線を釘付けにする。
「雨が止むまで、ちょっとだけ泊めてくれない?おじさん」
「ダメだと言ったら?」
「おじさんが後悔するだけだよ」
「なるほど……シロとはまた違ったいい目をしている。この世の渡り方を知っている目だ。気に入った、賢い子は嫌いじゃないよ、好きなだけ居るといい」
「やった〜」
「その代わり」
マシロさんの顎を持ち上げて「君は私に何ができる?」と問うハラセさんはもう俺の事なんて見ていなかった。
出会って数分も経たないうちに、人の興味を全て自分に引き寄せることが出来るマシロさん。
くすりと笑ったマシロさんがハラセさんの首に細い腕を絡ませて耳元で囁いた。
「今までで1番の天国、見せてあげる」
魅了して、引き寄せて、絡みついて、ゆっくり呑み込んでいく。
その様子はまるで人を喰らう怪物のようで、取り憑かれたように目が離せなかった。
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