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* Scent.2 *
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……────。
昨日から胃は食べ物を一切受けつけなくて、胃液を吐いてばかりだった。
腹の中で形になる前に、立花は薬を服用して全て流した。
丸一日休みをもらっていたので、立花は自分の部屋にずっと引きこもり、吐き気と目眩に堪えていたのだ。
情が湧かないといえば嘘になる。
自分の意志で下したという事実は、どれだけ心を削いでも消えない。
腫れぼったくした目を誰にも気付かれないように冷やしてから、立花は職場へ向かった。
朝の通勤ラッシュが過ぎた9時半頃はホームに立つ人も少ない。
黒の首輪を人目につかないように、ネック付きのセーターで隠して乗車する。
中は疎らでも、隣り合わないと席に座れなかったので、仕方なくドアの横に立った。
エナドリの独特の匂いとカーブで揺れる車内で、家を出るまでに何とか抑えていた悪心が、増幅されていく。
目立って大事にはしたくない。ぐらついた視界で酔わないように、その場で屈んでどうにかやり過ごそうとする。
──ああ……最悪。倒れたくない。せめて職場までもって欲しいのに。
「大丈夫か? 君、顔色がよくないな」
ずるずると床にへたれこむ立花を支えたのは、黒縁の眼鏡をかけた男だった。
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