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* Scent.3 *
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唯人と呼ばれた少年はゆっくりと歩いて立花の前に立つ。
こちらから声をかけようか迷っている間に、唯人はさっと瑛智の背後にまたその姿を潜めてしまった。
「すまないね。昔から人見知りで、身体も弱くあまり人前には出ないものだから。気を悪くしないで欲しい」
瑛智は言いながら、裾を掴んでいる唯人の背中を軽く叩いている。
突然夜分にやって来た余所者の立花を警戒して、唯人は頑なに前に出ようとしない。
「ずっと兄妹が欲しいと言っていただろう。だからほら、プレゼントだよ」
まるでペットのような言い方だな、と感じた。
今までの境遇や受けた仕打ちを思い起こせば、まだそちらのほうが遥かにいい。
兄妹という言葉に反応して、それまで気弱そうにしていた唯人は、少しだけ表情を引き締めた。
「は、初めまして。包海 唯人ですっ」
「……初めまして」
「すごい……! オメガなんて初めて見た……! オメガってすっごく珍しいんでしょ!?」
悪意があるのかどうかは分からない。
けれど、立花にとっては不快な台詞を浴びせられ、唯人に対して嫌悪を抱いてしまった。
オメガと繰り返し発する唯人の口を、手で塞いだのは瑛智だ。
──こんな人と、家族になれって言うの。
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