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* Scent.4 *
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「騒がしくして、すみませんでした。……それと、勝手にここまで来たことも。変なことに巻き込んでしまったお詫びを、したかっただけなので」
「ええ、と。落ち着いて、立花君。頭を上げて欲しい。謝るべきなのは俺のほうだから」
酷く優しげな声が降ってきて、立花は紅茶色の目を大きく見開いた。
立花の存在を否定するような言葉は、1つも混ざっていない。
「え! 立花君って。郁ちゃんが毎日通いつめてたところの……」
「……煩いよ。真下[マシタ]。それにまた検体を雑に扱って。ゆっくりでいいから少しずつ運んでくれないかな」
「わ、出た。郁ちゃん苦手な話題になると、すぐ私の悪口言うよね。性格悪い」
涼風は1度立花のほうを見て、苦い顔をする。
重さはそれほどではないけれど嵩高くて厄介だったそれらを全て受け取ると、院生室の中の机まで運んだ。
真下と呼ばれた人物は女性だった。
背丈は立花とそう変わらない、目鼻立ちがくっきりとしていてはきはきと喋る人だ。
──郁ちゃん、って言っていたな……。
恐らく涼風よりは年下なのだろうけれど、2人の間に先輩後輩の壁は感じない。
「ずっと、話をしたかった。少しだけ時間をもらえる?」
「……え」
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