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3-3.高熱
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倒れる数分前の記憶はない。なぜ倒れるのか、何を考えていたのか、それを思い出そうとするとまた倒れてしまう為、何も考えないようにしている。
もう誰にも迷惑をかけたくないのに、蓮夏にも負担をかけさせたくないのに、僕はまだ…、弱いのか…。
「離して、蓮夏」
翌朝、僕は蓮夏に引き止められるのを制するようにそう言い放った。
「咲太、いい加減に言うことを聞きなさい。…こんな高熱の状態で何故わざわざ大学に行こうとする」
まだパジャマ姿のまま蓮夏に腕を掴まれた状態の僕は、頬を紅潮させハァハァと荒い息をする。
「…熱なんかないよ。測ってもないのに何で分かるの、僕は元気だよ、心配しないで」
そう言って勢いよくぱっと腕を払おうとするも、振り払う力すら体になかった。
どうして僕は、こんなに弱いんだろう。
ぎゅっと蓮夏に掴まれた腕。
ふと見上げると、悲しそうな顔をして蓮夏が僕を見つめていた。
「…頼むから、言うこと聞いて。」
「…」
「これ以上心配させるな、…なに焦ってるんだ咲太…」
ぎゅっと蓮夏の大きな胸に抱き締められる。
心が浄化していくように、激しい感情が徐々に落ち着いていく。
「…蓮夏」
だって、これ以上足枷になりたくなかった。蓮夏に強くなった自分の姿を見せたかった。
「咲太の考えてることは分かってる。でもね、無理をするのは違うだろう。…俺は君が元気でいてくれれば、…生きてくれていれば、ただそれだけでいいんだ」
じゃあ、行ってくるから。
蓮夏は僕をベッドに寝かしつけると、そう言って軽く微笑むと自室を後にした。
僕はそれからグラグラとする頭に疲れきったように深い眠りへと落ちていった。
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