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「陛下、フォルダムでございます」
「入れ」という声が聞こえて中に入ると、そこには書類に目を通す国王の姿があった。
「どうだった、ルバートは」
「以前と変わりありませんでした」
「公爵の娘とは?」
「………公爵夫人となるには少し…」
「つまり、彼女と結婚したくないと」
「………」
「お前は変わらず、誤魔化そうとすると沈黙が増えるな」
「申し訳ありません」
それはきっとまだ何処かで“家族”という物に執着しているからかもしれない。
父親なら、俺の気持ちを分かってくれるのではないかと甘えだ。
そんな事王族なら尚更ありえないと、分かっているのに。
「臣籍降下する王子を受け入れてもらえるだけ、いいと思え。
彼女に問題があるならば、お前がその手綱を握っていればいいだろう」
「そうですね」
自分はそうしているとでも言いたいのだろうか
母が王妃としてただ笑っているだけではないという事をこの男は知っているのだろうか
「………」
「それからアーヌの皇太子が一ヶ月後この国に来るそうだから、お前も宮中行事に参加するように。アーヌでは世話になったのだろう?」
「…はい」
「他に話がないなら、もういいぞ」
「失礼いたします」
いかにも忙しいと言うように、父は書類に目を戻した。
俺はまた言えない気持ちを積み重ねて、王宮を後にした。
落ち込んだ気分を上げる為、自宮に戻るとお気に入りの地図を机の上に広げる。
それは大陸全土がほぼ描かれたものである。
大陸の東に位置するセザンヌの中でも南東に位置するルバートの、さらに東の海には一つの国ではなく、大小の島々で構成される連邦国家があるらしい。
らしい、というのは国交を結んでいない為旅人や漁師達の証言から推測しているからだ。
「………この途切れた地図の向こうには、どんな世界があるんだろう」
地図の右隣の机の上、想像である島の位置を指でなぞる。
未だこの世の全てを見たという人間はいない。
それができたなら…
「いや、それより今はルバートだ」
3ヶ月前にも海賊に襲われた船が出た。
彼らが言うには日に焼けた浅黒い肌に、黒い髪と、黒い目で平坦な顔をしていたと言う。
この辺りで当てはまるそれらしい国はないが、一番近しいのは西で国境を接するザラッダだ。
しかし海賊達の船は何故か早く、最後まで追える事が出来た者はいない。
それに少数だがザラッダの領海内でも海賊による略奪行為は報告されていると言う。
彼らが何者で、せめて何処に拠点を置いているのかが分かれば対策は打てるのに。
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