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女は言った。
『例え周りにどう思われたとしても、私は私の生きたいように生きるわ』
それが出来たらどんなにいいだろう…
アンナとは結婚したくない。
けれど巨額な海産物の利益を出しているルバートの領主にはなりたい。
それだけなら皇太子の提案に乗るのも悪くない。
それにアーヌからの援助があれば目下の問題である海賊の横行もどうにかなるかもしれない。
けれど、代々の領主を務めた公爵の娘であるアンナを追い出し、新しくシアン様を迎え入れたら領民達はどう思うだろうか?
貴族達は恐らく国で初めてとなる同性の俺の結婚をどう思うだろうか?
あれ…?
自分の事しか考えていなかったが、アーヌでは同性婚が認められているのだ。
だったら、どうしてわざわざセザンヌにシアン様が来る必要があるんだ。
シアン様だって臣籍降下するにしろ、爵位が与えられるはずだ。
だったらそんなに結婚させたいなら、俺がアーヌに行けばすぐにでもできるんじゃ…
「あの殿下?」
「やっと腹が決まったのか?」
「いえまだですが、シアン様はセザンヌで暮らすおつもりなんですか?アーヌではなく」
「は?当たり前だろう?お前がセザンヌに居たがるんだから。
それとも公爵の地位も国も捨ててアーヌに来れるのか、お前は?」
「いえ…」
「ほんと運命の相手には、甘い人達だよ」
……だって知らなかったんだ。
自分がこんなにも、他人に慕わられるなんて
「お前そんなにこの劇好きなのか?」
「え?いえ…もう何度も見ておりますから、そこまで」
「けど真っ赤だぞ、顔」
「そうなんですか?」
『本当は泣き出しそうだぞ?って言いたかった』と彼に言われたのは、それから数年経ってのことだ。
カーテンコールが繰り返される劇は、観客に好評だった。
「いい劇でした。特に彼女が恋人を思って…」
支配人にお礼を言う皇太子と一緒に出口へと進む。
意外にも彼はしっかりと劇を見ていて、芸術的な知識も深かった。
「皇太子殿下にそのようなお言葉を頂き大変光栄でございます。またセザンヌにお越しの際はお待ちしております」
「ああ、次の劇を楽しみにしているよ」
来るときに乗った馬車に乗り、支配人達に見送られながら王宮へと帰る。
夜の闇が窓から入り込んできていて、灯りがあるとはいえ、馬車の中は暗かった。
「腹をくくります」
「………」
「皇太子殿下、私にシアン様を下さい」
「…次手放そうとしたら、ただじゃ済まさないからな」
「そのような事は起きません」
臣下になるとはいえまだ王族である俺は、結婚するには順を踏んだ王族の婚礼用の議会の承認を得なければいけない事をわかっていた。
けれど同時に、今こうするべきだとわかったのだ。
これが俺の運命なのだと
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