アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
金色の瞳のチェシャ猫のお話13
-
@@@@@
「…え?八朔さんが、用意されたんですか?」
天花住職は多忙だった。朝から晩まで、職務に追われてる。大体の一日のスケジュールは決まっているが、それ通りにならないことが多い。今日だって順調に事が運べば19時には夕餉を食べる事が出来たはずだが、20時をすぎている。おそらく、これが大体の天花のスケジュールなのだと八朔は把握した。
「え…はい。いけなかったでしょうか?」
玄米の入ったご飯、豆腐のみそ汁、御新香と佃煮、煮物など食卓には並んでいた。
「いえ…」
丁度、天花が一息つけるタイミングを知っていたかのように用意されていて、並べられていた。八朔は、白い割烹着を着ているが、その姿はまるで新妻のように可憐だった。
「…意外でしたので…」
天花は、畳が引かれた六畳の部屋に天花のお膳に乗せられたご飯をみて、自分が空腹であった事を思い出した。天花は、昼を食べ損ねて今にいたるのだ。
「住職は食べられますか?」
八朔の穏やかな声に、天花は頷く。
「はい…もう一息つけますので…」
八朔は、割烹着を脱いで台所の椅子にかけてから、自らのご飯を膳にのせる。
「ちょうど、よかったです」
食事の用意がしてある部屋に持ってくると、天花は膳の前に座って意外そうに八朔を目で追っていた。
「…お先に頂きましょう、住職。遅くなるので」
「そ、そうですか…」
天花が座っている位置から右手側に座った。
「いただきます」
両手を合わせて、心から唱えるように天花がいう言葉に合わせて、八朔も両手を合わせた。
「…」
食事は、なるべく音を立てずに静かに行う。話しかけたりはしない。ちらりと天花は八朔を見た。お膳の前に静かに座る彼のたたずまいは、まるで冬に咲く寒椿のように儚く美しい。色白で、可憐な顔つきの中性的な男の姿に不思議な魅力を感じる。
今朝、風花と明雪が彼に見とれていたように、同性という垣根さえも、あやふやになりそうなほど、絵になる。八朔の所だけ、切り取られているかのようだった。絵に例えるなら、洋画というよりは、何方かと言えば邦画で、最小限に美しさが表現されたものだ。墨の濃淡で表現され、美しさを際立たせたくて一点だけ色を使うかのような、そんな美人画だろう。だからこそ、雪が降った日の鮮やかな椿は、はえるのだ。
「…」
やめよう。
男の美しさを例えて何になるのか…天花は、食事を終えて膳を片付ける。
「住職…後は、僕がやります」
そう言って、膳を下げる刹那、手が触れる。
ガタッと膳が揺れるが、食器が割れるような事は無かったが、お互いに当たって、音がした。
「あっ!すまない…」
咄嗟に、膳を2人で支えてしまうと、2人の距離が近かった事に気づく。
「…住職」
八朔は、膳を床におく。
「は、八朔さんんん??」
徐々に顔が近くなる八朔に、天花は動揺する。離れて見ていても、魅力的な彼が、近づいてくる。美しい顔立ちに思わず見惚れてしまう。
「ストーーーップ!!」
その時だ。
スパーン!!と襖が開いた。
「っち」
八朔は美しい顔が歪むほど舌打ちをした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 92