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39 ブレーメンへ行こう!1
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軽快な前奏曲。
スピードを上げて盛り上がる。
そして。
辺りは静かになり、段々重く暗いテーマになる。
すると、重苦しい雰囲気の中、一匹のロバががっくり肩を落として歩いてきた。
「はあ~……。ボクはどうしたらいいんだろうか?」
ロバは一人嘆き、その場に座り込んだ。
「確かに、年はとったさ!だけど。だからって!重い袋を運ぶのが辛くなっただけで『出て行け!』だなんて……ひどすぎる。ねえ?そう思いませんか?」
ロバは客席に向け同意を求めるが、辺りは静まり返っていた。
聞こえてくるのは悲痛なストリングスの音色だけ。
「おれは、なにやっているんだろう?誰にどうしてもらいたいって言うのだ。あてのないこれからのこと。自分で考えなくちゃ。誰かに聞いたって答えなんて返ってきやしないのだから」
一人で納得して頷くと、彼は立ち上がって周囲をうろうろした。
「どうしようか?」
「一人ぼっちのボクでも、なにか出来ることがあるはずだ」
最初は重い足取りだったロバ。
しかし、うろうろするうちに歩調は早まり、そして仕舞いにはスキップに変わる。
その変わりように客席からは笑いが洩れた。
そして。
最後に、ロバは「ひらめいた!」と叫んで転倒する。
爆笑。
「ブレーメンに行こう!」
彼は首だけ起こしてそう叫ぶ。
音楽もぴったりと止む。
彼が立ち上がって客席に腕を広げてみせると、今までの重苦しい音楽は一変し、明るい陽気なポルカに変わる。
「♪ブレーメンって知っているかい?ブレーメンは音楽の町。ブレーメンに行けばみんな歌って踊って楽しく音楽を奏でられる町さ~。おれはギターが弾けるんだもの!ブレーメンに行けばきっといいことがあるに違いない!そうだ!ブレーメンに行こう!」
ロバは嬉しそうにくるくる回って踊る。
音楽も陽気なテンポになりステージは和やかなムードになる。
そして、ロバは下手に下がり、音楽は少しずつペースを落として静かな曲につながった。
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