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40 文化祭の夜に2
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「はい?」
「なにぼけっとしてんだよ」
「いやあ、今日はさすがに疲れました」
「本当だ」
「でも星野さんのロバ、素敵でしたよ」
「おれだってやるときはやるさあ~」
星野は上機嫌。
いっつもぼさっとして文句ばっかり言っている彼だけど、今回ばかりはしっかりやり遂げた。
星野のロバは結構好評だったもの。
「そういう蒼こそ頑張ったな。一時はどうなることかと思ったけどさ」
本当だ。
一時は自分でもダメかと思ったけど。
「みんなのおかげです。初体験だったけど、なんとかなったから本当によかった」
本当にほっとした。
やり遂げるってこういうことなのだなって。
「蒼にゃんも好評だったじゃないか」
「そんなこと……」
でもよかった。
自分も頑張れたってこと。
自分も少しだけど音楽ができるって分かったことが今回の収穫だ。
嬉しくてニヤニヤしていると、関口が焼酎の瓶を抱えてやってきた。
どうやら佐伯たちから逃げてきたようだ。
「なんだよ~!二人で話しこんじゃって」
「関口~。お前久しぶりじゃんか」
星野は嬉しそうだ。
確かに。
桜の店に行くようになってから関口はふらっと遊びに来ることはなくなったから。
「おれも色々あるんですよ!」
「色々ってなんだ?色々って?お前、おれに内緒でゼスプリに出ることにしたらしいじゃないか」
「なんで知っているんですか!?」
関口はビックリだ。
コンクールのことは柴田にしか言っていない。
関口はちらっと顔を上げて柴田を見る。
彼は横川と楽しそうに飲んでいた。
同じ指揮者同士で意気投合しているところなのだろう。
彼はそういうことを外部に漏らすような人でもないし。
違うはずだ。
蒼だって誰にも話してはいないし。
犯人捜しに一人奔走している関口なんてお構いなしで星野は続けた。
「なんでって。世界のマエストロが心配して電話を寄越したぞ」
「なにッ!!」
関口は焦る。
「あいつ、一体どんだけあちこちに言いふらしているんだ……」
「まあまあ。心配しているんじゃないのか?」
「んなわけないですよ!絶対嫌がらせです!あいつ……。おれにプレッシャーをかけるためにそんな嫌がらせを!」
き~っと怒っている関口を蒼は宥める。
「そう怒らないでよ~。関口」
「これが怒らずにはいられるかってんだ!」
これは酔っ払っているようだ。
いつもだったら、蒼のほうがぐ~たらしているけど、今日は接待なんかで飲めなかったから。
関口のほうが最初に出来上がってしまっていた。
一人怒っている関口を見て、星野は苦笑した。
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