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48.過去との対峙1
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仕事ばっかりの蒼の生活はいっぺんしていた。
遅番のほかに合唱の練習が週に2回入るのだ。
なかなか忙しい。
黒田は無理しなくていいって言ってくれるけど、蒼の性格からしたら、そういう訳にはいかないのだ。
やるからには真面目にやっていきたい。
残業があってどうしても参加できない時は別として、なるべく参加するようにはしていた。
「ふぅ~」
定時になり、伸びをする。
カタカタとキーボードを打つ音が響いていた。
帰ろうかな?
どうしよう。
みんなをちらっと見るが、誰も蒼に視線を向けることはない。
全員が全員。
定時になったのも忘れて仕事をしているのだ。
今日は、どうやら暇なのは蒼だけらしい。
合唱の練習もない日だし。
明日から連休だし。
帰ってしまおうかな?
そう思う。
そっとパソコンを閉じて席を立つ。
と、不意に伸びてきた手が蒼の腕を捕まえた。
「は!?」
「帰宅しようとしているのではないだろうな?」
横目でジロリと見てくる星野は恐い。
「あ、あの。その。すみません。おれ、用事なんかあったりして……」
「用事?おかしいな。このお友達の少ない蒼ちゃんが?」
「ぐ……」
「関口もいないのに。用事なんてないはずだっ!」
言い切られても困る。
おどおどしていると、ちょうどのタイミングで蒼の携帯が鳴った。
「あ、ほら!星野さん!ぶ~ぶ~って呼んでますっ!ってことで、失礼しますッ!!」
蒼は携帯の振動に、一瞬ひるんで力を抜いた星野の腕を振り払って必死に事務室を駆け出した。
「わ!逃亡犯!逃亡犯ッ!」
吉田も便乗して声を上げているのが聞こえた。
だけど、お構いなしだ。
さっさと姿を消した蒼。
星野はちっと舌打ちをした。
しかし、水野谷は苦笑する。
「まあまあ。蒼だっていつも頑張っているんだから。たまには先に帰らせてあげたら」
「ぶう。生意気です」
「そうです!一番下っ端なんだから……」
星野と吉田の抗議に呆れて、水野谷は無視を決め込むことにした。
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