アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
77.二人の関係3
-
着いたのか?
誰なのだろうか?
おそるおそる玄関へ行き、そして扉を開ける。
横に引く扉は昔ながらのもの。
ガラガラとガラスが音を立てた。
「誰?」
そっと顔を出す。
そこには予想外の男がいた。
『圭!やっと見つけた!!』
大柄な男。
黒髪をおしゃれに流している。
そこにいたのはレオーネだった。
『レオーネ!?どうした?』
『どうせ来週末には日本に来る予定だったんだし。少し早めに来て日本見物でもしようかと思ってさ』
圭は彼をまじまじと見つめる。
大きなスーツケースにヴァイオリンケース。
日本の秋にはふさわしくない、なんとも爽やかな夏満載の格好。
なんだか不似合いで笑うしかない。
野木が慌てて電話を寄越すはずだ。
『お前、暇なの?』
『そう言うな。早めに着てやったんだからさ』
どういう言い草だ。
呆れ顔の圭なんてそっちのけで、レオーネは勝手に上がり込む。
『お!猫じゃん!』
『けだもって言うの』
『けだもか~。変な名前』
『毛玉みたいだから……日本語では毛玉を「けだま」って言うんだ。だから、それをもじって……』
一生懸命に説明している間に、彼はあっちこっち物色して歩く。
気が付くと、レオーネの姿は玄関から消えていた。
『お、おい!!』
慌てて自分も上がり込む。
彼は練習室にいた。
『いい部屋だな。こんなの持っているの』
きょろきょろして、それから廊下に出る。
『なあ、圭。しばらく泊めてくれよ』
『はあ!?なに言い出すんだよ?』
『だってさ。おれ、早めに着たのはいいけど、お金ないし』
『じゃあ来るなよ!』
ソファに座った彼は不敵に笑う。
『いいじゃないの。蒼とのことは邪魔しないからさ。それとも、蒼はいないとか?』
『なに言ってんだよ?』
『だって、この前逢ったときは喧嘩中だったじゃん』
確かに。
そうかも知れない。
前回、レオーネに逢った時。
蒼とは喧嘩中。
いや。
喧嘩と言うよりも、蒼が家出していたのだが……。
その後の話をした覚えはない。
レオーネの中では、二人は分かれたことになっているのかも知れなかった。
圭は得意げに自分の左手を見せる。
『は?』
『へへん。見てみな。これ』
嬉しそうな圭。
リオーネは瞬きをして、彼の指に鈍く光る金色の指輪を見つめる。
『まさか?』
『そのまさか』
『け、結婚しちゃったわけ!?』
彼は頭を抱えてショックのリアクション。
大きいリアクションには慣れてきた。
圭は笑ってしまう。
『日本では同性の結婚は法的に認められていないからな。事実婚ってやつだよ。事実婚』
『それにしても……』
『レオーネ。障害は愛を強くするものらしいぞ?』
『は?』
どうせ、お前は障害にぶち当たっているんだろう?
そう睨んだ。
しかし、それは図星だったらしい。
彼は更に頭を抱えて落ち込む。
『圭~……。おれはダメかもしんない』
『ブルーノ?』
『そう』
ブルーノと言う言葉が出た途端。
彼の顔色はいっそう悪くなった。
『逢ってないの?』
『……うん』
『どうして?』
いつも一緒だったじゃないか。
ブルーノとはレオーネの相棒でもある。
レオーネとはゼスプリ音楽祭で知り合った。
彼も出場者の一人だったのだ。
その相棒、ピアノ伴奏者としてブルーノが着ていた。
二人は幼馴染だと言う。
いつでも一緒に音楽をやってきたらしかった。
ところが、あのコンクール以来。
伴奏者として出ていた彼の才能が世間に認められたのだ。
レオーネはもちろんだが、彼の伴奏を引き受けられないほどにブルーノの仕事も忙しくなってしまったそうだ。
『もう、おれの伴奏は出来ないんだってさ』
レオーネはしょぼんとしていた。
『そう言われたのか?』
『……』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
583 / 869