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85.主夫の1日3
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洗濯物も干し終わり、新聞のチラシを片手に車に乗り込む。
食料品などの買い物は最後だ。
まずはお菓子を買いに行く。
近所のお菓子屋に立ち寄り、和菓子を買い込む。
星音堂へはおせんべい。
梅津さんへは大福セット。
まずは星音堂へ。
事務室に顔を出すと、蒼が恥ずかしそうに迎えてくれた。
「目覚めた?」
ついさっきまではネムネムだったのに。
蒼は頬に手を当てながら苦笑する。
「けだもに引っかかれたところ。ひりひりする」
「ごめん。こんなになると思わなくて。けだもの爪、切っておかないと」
「ううん。おれが起きないのが悪いから」
もしょもしょ話をしていると、星野と尾形の茶々が入る。
「おいおい。何しに来たんだよ~?快気祝い持ってきたんじゃないのか~?」
「いちゃいちゃするなら自宅でしてくれ」
「勤務時間中だ」
最後の言葉は水野谷。
「そうだった。すみません。あの、これ。みなさんにお世話になってしまって」
圭は大きなおせんべいの箱を取り出す。
尾形からしたら「待っていました」と言うところだ。
いつもは、だらだらして、何事も最後なのに。
こういうときは早い。
彼は一番に出てきて、箱を受け取る。
「どうも。ご馳走様」
「おいおい。お前には遠慮と言う言葉がないのか?」
氏家は呆れる。
「だって~。どうせ、押し問答したってもらうものはもらうんでしょう?だったら無駄な時間は省いたほうがいいじゃないですか」
尾形の意見に高田は笑う。
「それはそうかもな」
「でしょう?高田さん。関口に遠慮なんていらないですよ。星音堂の準職員なんですから」
「いつの間に、職員扱いなんですか?」
圭は笑ってしまう。
だけど、嬉しい。
自分がそういう立場として歓迎されているのだから。
「職員のクセに菓子折り一つ持ってこないなんて、まったく失礼なヤツだからな」
星野の呟き。
聞き捨てならない。
そういうことか。
準職員なんて、仲間にしてもらっているような気にさせられるが……。
結局のところ、仲間に引き入れていいように扱おうと言う魂胆が見え見えだ。
「それより、腕はどうなんだ?」
水野谷は席を立って、彼の側にやってくる。
圭も長身だが、彼もまた長身。
二人で会話されてしまうと、間にいた蒼なんて子どもみたいな感覚だ。
「ええ。主治医が治るって保障してくれましたから。安心して、療養したいと思います」
圭が精神的に不安定だと聞いていた星野たちは一瞬、首を傾げるが、彼なりに克服したのだろうと理解する。
「そうか」
「関口。頑張れよ」
「絶対治るって」
「そうそう」
「また、演奏聞かせろよな」
みんなの激励を受け、圭は星音堂を後にする。
絶対に演奏してみせる。
また、この場所で。
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